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眼内レンズの寿命

[2024.09.11]
白内障手術で使用する眼内レンズはどれくらい長持ちしますか」という質問を受けることがあります。結論からお伝えすると、眼内レンズは「原則は」一生物ということになります。このため、一般的には一度挿入した眼内レンズは交換することなく、生涯使用することができます。
原則は」と述べたとおり、ほとんどの方が一度入れた眼内レンズをそのまま使うことができるのですが、中にはそれが叶わない場合があり、この理由について解説します。
 
1.眼内レンズ脱臼
白内障手術は、混濁した水晶体の中身だけを取り除き、外側を包む袋の部分(水晶体嚢)を残すことで、残った水晶体嚢の中に眼内レンズを固定する手術です。この水晶体嚢はチン氏帯という、ひものような組織によって眼内で固定されています。このひもが切れてしまうと、正しい場所で眼内レンズが固定されず、それどころか水晶体嚢ごと眼の奥に落ちてしまうことがあります。これを眼内レンズ脱臼といいます。眼内レンズ脱臼が生じた場合には硝子体手術を行い、眼の奥に落ちているレンズを摘出した上で、新しいレンズを眼内に縫い付ける手術を行います。眼内レンズ脱臼自体は頻繁に起こることではありません。一般に、落屑症候群、強度近視や外傷後などチン氏帯が脆弱化する原因は多岐にわたりますが、その程度が高度になるといよいよ眼内レンズが脱臼してしまうのです。
 
2.眼内レンズの混濁
時間経過とともに眼内レンズが混濁してしまうことがあります。この混濁はグリスニングホワイトニングと呼ばれ、混濁が高度になると物を見る機能に影響を及ぼします。近年では混濁してしまうレンズは少なくなってきておりますが、それでもレンズの種類によっては混濁してしまうケースがあるため、当院では混濁リスクが報告されているレンズは採用しないようにしています。
 
3.眼内レンズの度数や種類を交換したい
単焦点レンズで白内障手術を行ったものの、手術が終わってからやはり不便で多焦点レンズに変えたいという場合や、単焦点レンズで遠方にピントを合わせたが、やはり手元が見えないことに慣れず、手元にピントを合わせたいなどという場合には、眼内レンズを交換します。
また、術後屈折誤差といって、術前に計算して導かれた度数のレンズを挿入したものの、想定と違うところにピントが合ってしまう現象があり、現在では眼内レンズ度数決定のための検査機器や眼内レンズ度数計算式が洗練されたことにより生活に支障が出るレベルの誤差はそうそう生じないものの、この誤差が大きい場合には眼内レンズを交換する手術が必要になることもあります。
そもそも一度挿入した眼内レンズはもう交換できませんと最初から釘を刺す医師もおられますが、当院では眼内の状況に応じて眼内レンズ交換を含む白内障手術のやり直しが可能です。
 
このようにさまざまな可能性が考えられますが、これらはあくまで例外的な話であり、前述の通り眼内レンズは原則一生物ですから、過度に心配しないようにしてください。近年は多様な種類の眼内レンズから自身に合ったレンズを選択することができるようになっていますが、一生物の眼内レンズだからこそ、後悔のないレンズを選びたいものですね。
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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