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片眼のみ多焦点眼内レンズを使用する場合

[2025.01.12]
白内障手術で多焦点眼内レンズを選択する場合、両眼ともに多焦点眼内レンズを使用することが多いです。そして多くの場合、多焦点眼内レンズの種類についても左右で同じ種類のレンズを選択します。一方で、片眼のみ多焦点眼内レンズを使用して、残りの片眼には単焦点眼内レンズを使用することがあり、これについて解説します。
片眼のみ単焦点レンズを使用する必要があるときは、下記のような状況です。
 
片眼には網膜・視神経疾患があり、もう片眼は疾患がない場合
回折型多焦点眼内レンズ黄斑前膜などの網膜疾患や、緑内障があると使用できません。もし片眼にこのような疾患があると、疾患がある方の眼に単焦点レンズを挿入し、疾患がない方の眼に多焦点レンズを使用することがあります。この場合、遠くを見るときには両眼とも裸眼で見ることができますが、手元については多焦点レンズが入っている方の眼に依存するため、手元の見え方がやや弱くなります。このため長時間の読書など、細かいものを近くでじっくり見たい場合には老眼鏡を使用する必要があると考えられます。しかしながら、両眼ともに単焦点レンズが入っている場合と比較すれば、日常生活でちょっと手元を見たいとき(スマホを少し確認したり、買い物の際に値札を見るときなど)にいちいち老眼鏡を装用しないで良いので、片眼だけでもやはり楽になることが多いようです。
また、近年は焦点深度拡張型(EDOF)多焦点眼内レンズが開発されたことにより、これらは網膜・視神経疾患があったとしても使用できるため、片眼に回折型多焦点眼内レンズを使用するのではなく、両眼に焦点深度拡張型(EDOF)多焦点眼内レンズを選択することも多いです。
 
片眼は「いわゆる難症例」の白内障のために眼内レンズの縫着が必要になり、もう片眼は通常の眼内レンズを挿入出来た場合
進行した白内障や、高度のチン氏帯脆弱などの難治性白内障の手術では、水晶体嚢を温存することができず、水晶体嚢ごと摘出し、硝子体手術および眼内レンズ縫着術(もしくは眼内レンズ強膜内固定術)が必要になることがあります。この場合、一般的には単焦点レンズを縫着することになります。このような方はもう片眼についてもリスクが高い難治性白内障であることが多いですが、もし可能であれば少なくとも片眼に多焦点眼内レンズを使用して、手元が少しでも見えるような状態を目指すことがあります。
 
片眼はすでに単焦点眼内レンズで手術してあるが、やはりもう片眼の手術の際に多焦点眼内レンズを使用したいと思った場合
先に片眼の手術を行い、そのときには単焦点レンズでよいと思って単焦点レンズを選択したものの、その後やはり不便を感じ、もう片眼に多焦点眼内レンズを挿入することがあります。ご希望に応じて先に手術した方の眼の白内障手術をやり直して、単焦点レンズから多焦点レンズに交換することもあります。
 
片眼に多焦点レンズを使用して、残りの片眼に単焦点レンズを使用することは珍しいことではありません。眼の中の状況やご本人のライフスタイルなどによって最適な選択肢は異なるので、多焦点レンズに精通した医師とよく相談してご希望の見え方を実現してくださいね。

記事監修者について

渡辺 貴士
眼科医 渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京科学大学眼科 非常勤講師

大学病院や基幹病院において多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京科学大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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