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硝子体手術(網膜硝子体手術)

硝子体とは

硝子体(しょうしたい)とは、眼の容積の大部分を占めるゼリー状の透明な組織で、眼球の形態を保持しています。また、硝子体の奥には網膜があり、網膜に光があたり視神経を通して脳に情報が伝わることで物が見えます。
 
 

この硝子体自体が、出血やその他の原因によって濁ってしまった場合には、硝子体手術によって濁った硝子体を取り除くことが必要となります。また、網膜に異常な膜がはった場合や網膜に穴が開いた場合にも、硝子体手術によって硝子体を取り除いた後に網膜に対して必要な治療を行います。難治性の白内障の治療や、白内障手術で合併症が起きた際にも硝子体手術を行うことがあります。

手術は日帰りで行い、硝子体手術が必要なほとんど全ての疾患に対応することができます。
 

硝子体手術機器

当院では、大学病院や基幹病院で使用されているAlcon社の『Constellation』という機械を用いて硝子体手術を行います。顕微鏡はZeiss社の『Lumera 700』という最高水準の機器を導入し、広角眼底観察システム『Resight』を取り入れることで、高精度で安全な手術環境を提供します。
 
 

硝子体手術の適応となる疾患

硝子体手術が必要となる疾患には下記があります。詳しい病態については、それぞれの病名のページをご参照下さい。
 
1)黄斑前膜(網膜前膜):網膜の表面にできた異常な膜により、網膜が歪んだ状態です。

2)黄斑円孔:網膜の中心部分に穴が開いた状態です。

3)網膜剥離:網膜の周辺部にできた穴から網膜が剥がれた状態です。緊急での治療が必要になることが多いです。
4)硝子体出血:眼内の硝子体に出血を生じた状態で、「糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症・加齢黄斑変性」などの様々な病気により生じます。
5)眼内レンズ脱臼・落下:白内障手術で眼の中に入れた眼内レンズの位置がずれてしまった状態です。眼内レンズを摘出して、新しいレンズを再固定する必要があります。
6)近視性牽引黄斑症:強度近視で眼球が前後方向に引き伸ばされた際に、網膜の層が裂けた状態です。
7)硝子体黄斑牽引症候群:硝子体と網膜の異常な癒着により、網膜が牽引されて歪んだ状態です。
 

硝子体手術の方法

1)麻酔
麻酔は目薬の麻酔と、眼の奥に注入する麻酔(球後麻酔)を併用します。
2)器具挿入の準備
白目の部分に手術器具を挿入するための小さな穴を3カ所あけます。1つ目は、手術中に眼球の形を維持するために眼内に灌流液を流すためのもの、2つ目は手術中に眼の中を観察するための照明を入れるもの、3つ目は硝子体を取り除くために必要なカッターや眼の奥の操作に必要な鑷子(せっし)などの器具をいれるためのものになります。
3)硝子体の切除
硝子体カッターにて、硝子体を切除しながら吸引します。硝子体がなくなったスペースには灌流液が流れこむことで、手術中に眼球の形状が維持されます。
4)疾患に応じた治療
黄斑前膜では、網膜の表面に付着した異常な膜を鑷子で剥がします。
黄斑円孔では、網膜の表面の膜を剥がした後に、眼の中に空気(ガス)を入れます。
網膜剥離では、剥がれた網膜を元の位置に戻した後に、網膜剥離の原因となった穴の周りにレーザー照射を行い、最後に眼の中に空気(ガス)を入れます。
硝子体出血では、出血を取り除いた後に、出血の原因により病変部に対してレーザー治療が必要となります。
5)創口の閉鎖
器具の挿入のために開けた穴を閉じて終了となります。
 

白内障との同時手術について

硝子体手術を行う場合には、白内障手術を同時に行うことが多いです。
白内障がある状態では硝子体手術の際に視認性が落ちてしまう上に、硝子体手術のみを行った場合には1-2年以内に白内障が進行して改めて手術が必要になることが多く、手術の負担を減らすという目的もあります。
しかし、若い人では白内障手術を同時に行うことによって、術後に老眼(手元が見えにくい)になるデメリットもあるため、患者様ごとに治療方針については相談させていただきます。

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手術費用

硝子体手術の費用は治療する疾患の種類や、患者様のご年齢や収入によって費用の負担が変わります。また、白内障手術を同時に行う場合にも費用の負担が変わります。

片眼あたりの費用の概算は下記のとおりで、金額には手術代金とその他にかかる費用を含んでいます。

上記の表で上限と記載されている金額は、高額療養費制度による自己負担限度額に達する場合となります。
高額療養費制度とは、医療費の負担が高額になった場合に1か月あたりの医療費の支払い金額の上限を定めている制度で、限度額を上回った金額が払い戻しされます。高額療養費制度の詳細については下記をご参照ください。

手術の合併症

硝子体手術では、一定の確率で術中や術後に合併症を生じる可能性があります。当院では万が一合併症が生じた際にも最適な治療をおこないます。

  1. 細菌性眼内炎:細菌が創口から眼内に侵入し、眼内に感染が起こった状態です。数千例に1例程度のまれな合併症ですが、重症の場合には治療を行っても視力が大きく損なわれることがあるため、発症した際には早期の治療が必要になります。
  2. 駆逐性出血:手術中に強く力んだ場合や血圧が高い場合などに、眼内の血管から激しい出血が起こることがあります。1万例に1例程度のまれな合併症ですが、視力が大きく損なわれます。
  3. 網膜剥離:硝子体手術後の数%に網膜剥離が発症することがあり、その場合には網膜剥離の治療のために再度の硝子体手術が必要になります。
  4. 硝子体出血:網膜の血管から眼内に出血が生じることで見えにくくなります。術後1ヶ月程度で自然に出血は消退することが多いですが、出血が長引く場合には再度の硝子体手術により出血の洗浄除去を行います。
  5. 交感性眼炎:非常にまれですが、術後に手術を受けた眼に加えて、手術を受けていない方の眼にも強い炎症を生じることがあります。ステロイド薬などによる治療が必要となります。
  6. 球後出血:球後麻酔の際に眼窩(眼球の奥の空間)に出血が生じることがあります。
  7. 角膜混濁:術後は一時的に角膜が濁って見えにくくなることがありますが、多くの場合には自然に軽快すます。
  8. 高眼圧低眼圧:手術後は眼圧の上昇や低下を生じることがあります。眼圧を安定させるために、点眼薬や内服薬の使用および追加の処置を行うことがあります。
  9. 結膜下出血:白目(結膜)の部分が真っ赤になることがあります。創口を作成した際の出血が結膜の部分に回ることで生じます。術後1-2週間程度で自然に消退します。
白内障手術を同時に行った場合には、白内障手術に関連した水疱性角膜症、後嚢破損、チン氏帯断裂、水晶体の落下、術後屈折誤差などを生じる可能性があります。
 

医療機関の皆様へ

網膜剥離や白内障手術時の核落下など、緊急性が高い患者様をご紹介いただく際には、大変お手数ですが事前にお電話にてご連絡をいただけますと幸いです。
 

よくある質問 

入院での手術には対応していますか?

当院では全ての硝子体手術は日帰りで行っており、硝子体手術が必要なほとんど全ての疾患の治療に対応することができます。
しかし、病状や生活背景などを考慮して入院での手術が勧められる場合には、入院での手術をおこなっている医療機関にご紹介させていただきます。

術後の生活の制限はありますか?

手術翌日の夜から洗顔や洗髪は可能となり、入浴は術後5日以降から可能となりますが、眼の中に水が入らないように注意して生活してください。術後は専用の保護ゴーグルまたは眼鏡のご使用をお願いします。

いつから仕事に復帰できますか?

病気の種類や術後の経過によって仕事に復帰できるまでの期間は異なります。最低でも1週間はお休みいただく必要があります。
デスクワークの方では術後1週間以降を目処に復帰が可能ですが、力仕事をされている方や、埃や汗などが目に入りやすい環境で働かれている方では、復帰の時期について個別にご相談させていただきます。

 
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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