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白内障手術後のコンタクトレンズ処方について

[2025.04.01]
白内障手術後に新しい眼鏡やコンタクトレンズの処方を受けるのはいつ頃が適切か」という質問をいただくことが多いので、この記事で解説したいと思います。
白内障手術を行うと、眼の中に人工の眼内レンズが挿入されるためピントが合う位置(屈折度数)が変化します。単焦点レンズであれば通常は遠方もしくは近方のいずれかにピントを合わせ、ピントが合わない距離については眼鏡などを使用して見ることになります。このうち特に裸眼で近方が見えるように眼内レンズの度数を設定した場合、術後は遠方を見るために新しい眼鏡やコンタクトレンズが必要になります。
 
一般に、白内障手術の後は眼鏡やコンタクトの度数が安定するまで時間がかかると言われています。これは、白内障手術を行った直後は傷口がきちんと接着しておらず、それにより乱視が出る場合があるということと、眼の中で眼内レンズが固定されておらず、レンズが動くことで度数が変わってしまうということによるものです。以前は度数が落ち着くまで術後3ヶ月程度かかると言われていましたが、近年は手術創が2mm程度まで小さくなっており、惹起乱視(切開創により生じる角膜乱視)も少なくなっていることから、術後1ヶ月程度で度数が落ち着くことが多いようです。少々専門的な話になりますが、手術の際に強角膜切開を選択することにより、角膜切開に比して惹起乱視を少なくすることができます。(手術時間が30秒程度伸びるという欠点はありますが、当院でも強角膜切開のみ採用しています。詳しくはこちら
 
上記の背景から、術後手元にピントを合わせた方については、遠くが見えないと不便なので当院では術後数日経った時点で新しい眼鏡を処方しています。そこから度数が大きく変化することは通常あまりないのですが、念のために高い眼鏡は作らない、もしくはレンズ度数変更無料のサービスが付帯している眼鏡を購入することをおすすめします。白内障手術後のコンタクトレンズ処方については、度数の問題よりも感染リスクを下げる目的で、最低でも術後1ヶ月間は控えていただいています。これはハードコンタクトレンズでもソフトコンタクトレンズでも同様です。小さな切開創から手術を行えるようになったとはいえ、手術の直後1ヶ月程度は傷口が完全に塞がっていないと考えられます。この時期に眼に直接触れるコンタクトレンズを使用することは、細菌などが眼内へ侵入するのを助長する可能性があるのです。
 
白内障手術後にコンタクトレンズを装用して遠くが見えるようになると、今度は手元が見えなくなってしまうため、手元を見るためには老眼鏡が必要になります。そのため、コンタクトレンズを毎日朝から晩まで装用する習慣がある方は、白内障手術の段階で多焦点眼内レンズの使用も検討するべきです。多焦点眼内レンズにはメリットとデメリットがありますが、コンタクトレンズをケアする手間から解放され、さらに老眼を同時に治療できるのは生活の質の改善に大きく寄与する場合があります。多焦点眼内レンズは原則保険適用にならず、一定の自己負担が生じることが大きなデメリットであると考えられますが、コンタクトレンズを購入し続ける費用と手間と考えると、むしろコストパフォーマンスが良いということもあり得るのです。多焦点眼内レンズのメリットとデメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。
 
当院では、コンタクトレンズの処方は新小岩眼科分院でのみ行っております。新小岩眼科分院でコンタクトレンズを購入することもできますが、発行されたコンタクトレンズの処方箋をご自身で販売店にお持ちいただくという方法もあります。新小岩眼科分院でのコンタクトレンズ処方について詳しくはこちらをご覧ください。

記事監修者について

渡辺 貴士
眼科医 渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京科学大学眼科 非常勤講師

大学病院や基幹病院において多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京科学大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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