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強度近視眼の白内障手術

[2024.06.22]
強い近視がある状態の眼を強度近視眼といいます。強度近視眼では眼内のさまざまな組織に負担がかかり、組織が傷つくことで眼鏡をかけても視力が出ない状態(病的近視)になってしまうこともあります。
 
強度近視の方は白内障を合併しやすく、しばしば核白内障という特徴的な白内障を生じ、これにより視力が低下するだけでなく、さらに近視が進んでしまう場合があります。近視が強いとそれだけで白内障が進みやすくなってしまいますが、白内障は一度手術をすればその後は進行しないので、ほどほどのところで手術を行います。白内障手術は原則として、生活に困るくらい見え方が悪い場合に検討することをおすすめしていますが、強度近視の方はそこまで白内障が悪くなる前に手術を行う場合があります。これは、白内障手術により近視を軽くすることができるためです。
 
強度近視の方が白内障手術によって近視を軽くする場合、-3D(眼前33cm程度の位置にピントが合う度数)程度の近視にすることが多いです。それ以上近視を軽くすると手元が裸眼で見えなくなってしまいますし、逆にそれ以上近視を強くすると今度は遠くが見えにくかったり、ピントが合う距離が近すぎて不便なことが多いためです。近視を大きく減らして裸眼で遠方をはっきり見たい場合、単焦点レンズを選択すると手元が見えずに強いストレスの原因になることがあり、このような方は多焦点眼内レンズの使用を検討します。多焦点眼内レンズを使用すると手元も遠くも眼鏡無しで生活出来るようになる可能性がありますが、近視が強すぎる場合使用可能なレンズの種類に制限があり、既製品のレンズで対応できない場合にはEVOLVEというオーダーメイドの多焦点眼内レンズを使用します。
 
強度近視の方の手術では、逆瞳孔ブロック(瞳孔が牽引されることにより痛みがでたり瞳孔が閉じてしまう現象)が生じやすかったり、チン氏帯が脆弱であったりして、操作に注意が必要な場合があるので慣れている医師による執刀が望ましいでしょう。
 
白内障はもちろんのこと、強度近視の方は緑内障や網膜剥離、近視性牽引黄斑症候群や近視性脈絡膜新生血管などの、眼の奥の病気が起こりやすいので、専門医による定期的な検診をおすすめします。
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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