多焦点眼内レンズ「EVOLVE(エボルブ)」
[2023.12.24]
EVOLVE(エボルブ)という多焦点眼内レンズについて説明したいと思います。
このレンズは度数や乱視軸をオーダーメイド可能な多焦点眼内レンズで、強度近視や乱視の強い方にも対応できます。イタリアのSoleko社によって開発されました。乱視矯正レンズ(トーリックレンズ)については完全オーダーメイドのレンズで、乱視軸は1度刻みでオーダー可能です。素材から全て自社製造されている徹底ぶりで、非常に完成度の高い眼内レンズです。
EVOLVEは国内未承認レンズのため、EVOLVEを使用した手術は自費診療になります。
EVOLVEの最大の特徴は、選択可能なレンズ度数の幅が非常に広く、強度近視の方にも対応しているという点です。
強度近視の方に多焦点眼内レンズを入れようとした場合、国内で承認されている選定療養対象の眼内レンズでは、レンズの度数が制作範囲外となってしまい、多焦点眼内レンズの使用が難しい場合があります。
EVOLVEの制作範囲は-5.00Dから30.00Dまであり、強度近視の方の場合には低パワーレンズや、マイナスレンズを使用することができます。
EVOLVEの光学的特性は、屈折型の焦点深度拡張型(EDOF)多焦点眼内レンズであり、加入度数は2.5Dです。
手元は大まかに40cm程度の場所に焦点が合うイメージです。やや手元が弱く、細かいものを近くで見たい場合に老眼鏡が必要になる可能性がありますが、手元まで含めて完全に眼鏡なしで生活している人は70%という報告※もあり、同報告では90%の人が裸眼での見え方に満足しており、理論上の数値以上に見え方の満足度は高いようです。
また、多焦点眼内レンズ特有の光がにじんで見えたり、まぶしく見える現象(ハロー・グレア)が少ないのも非常に大きな特徴です。コントラストも良好です。
このように、EVOLVEは特に強度近視で多焦点眼内レンズを選択したい方にとって非常に優れた選択肢となります。また、ハロー・グレアやコントラスト感度の低下が嫌な方(暗所での作業や夜の運転が多い方など)に大変適しています。国内未承認レンズのために、健康保険(選定療養)による治療が行えない点が欠点です。
興味のある方は担当医にお気軽にご相談下さいね。
費用について
当院での国内未承認レンズを使用した手術の費用は、乱視矯正の有無にかかわらず一律で片眼 80万円+税(88万円)です。
上記の費用には眼内レンズ代金、手術技術料、薬剤代金、術後3ヶ月の診療費用を含みます。
また、手術前検査の際に術前検査費用3万円+税を申し受けます。
リスク・副作用について
エボルブを用いた白内障手術では、一般的な白内障手術と同様に細菌性眼内炎、駆逐性出血、水疱性角膜症、術後屈折誤差、高眼圧、黄斑浮腫、虹彩損傷、結膜下出血、後発白内障などの合併症があります(詳しくはこちらをご覧ください)。術後は多焦点眼内レンズ特有のハローやグレアなどの見え方が気になる場合があります。
後嚢破損やチン氏帯断裂などにより眼内レンズの縫着が必要となった場合には、多焦点眼内レンズが適応にならずに単焦点眼内レンズの挿入に切り替わる可能性があります。
医薬品医療機器等法について
この治療で使用されるエボルブは医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医療機器です。当院では、イタリアのSOLEKO社で製造されたものを個人輸入しております(個人輸入された医薬品等の使用によるリスクに関する情報はこちらをご覧ください)。国内においては承認されている同一の医療機器はありません。安全性については、EUにおいて製品の安全面を保証するCEマークを取得しております。未承認医薬品等であるため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
※Leopoldo Spadea (2021). Visual Performances of a New Extended Depth-of-Focus Intraocular Lens with a Refractive Design: A Prospective Study After Bilateral Implantation. Therapeutics and Clinical Risk Management 2021:17 727–738.
記事監修 眼科医 渡辺 貴士
日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師
大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。