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多焦点眼内レンズによるwaxy vision

[2024.04.23]
白内障手術の際に用いる多焦点眼内レンズは、裸眼の状態で手元も遠くも見やすくなるとても便利なレンズですが、いくつかのデメリットもあります。代表的なものとして、ハロー・グレアスターバーストといった、光がまぶしく見えたりしてしまう現象が挙げられます。これらはレンズの種類にもよりますが、大なり小なりみられる場合が多いです。ハロー・グレアは術後の時間経過とともに軽くなることが多いものの、神経質な性格の方や、夜間の運転が多い方などは注意が必要です。近年は焦点深度拡張型(EDOF)レンズという、ハロー・グレアが抑えられたレンズもありますが、焦点深度拡張型(EDOF)レンズは手元の見え方がやや弱いという弱点もあり、一長一短といった具合です。
現在一般的に使用される多焦点眼内レンズは、回折型多焦点眼内レンズもしくは焦点深度拡張型(EDOF)多焦点眼内レンズのいずれかです。このうち特に回折型多焦点眼内レンズを使用した際に、頻度は高くありませんが、waxy vision(ワクシービジョン)という、ワックスを塗ったようなぼやけた見え方が問題になることがあります。全体的にぼやっとして、なんとなく鮮明に見えないというものです。これは「コントラスト感度の低下」という現象が関係していると言われています。コントラスト感度とは、「物をくっきり、はっきり見る力」であり、回折型多焦点眼内レンズでは一般にコントラスト感度が低下します。コントラスト感度低下の程度はレンズの種類によって異なります。また、術前の白内障が軽度であればあるほど、このコントラスト感度の低下を自覚しやすいとも言われています。
waxy visionは時間経過とともに慣れて症状が軽くなることもありますが、逆に全く改善せず、強い見え方の違和感が持続する場合があります。このような場合には、眼底診察を行い、眼の奥の硝子体という部分に濁り(硝子体混濁)がないかを確認します。硝子体混濁が原因となっている場合には硝子体手術を行うことによりwaxy visionが改善する場合があります。それでも改善しない場合、もしくは硝子体に異常が無い場合には眼内レンズの交換を検討します。この場合には、単焦点レンズもしくは焦点深度拡張型(EDOF)レンズへの交換を検討することが多いです。
このように多焦点眼内レンズにはデメリットの側面もありますが、適切に使用することで眼鏡への依存度を下げた快適な生活を送ることができます。レンズの選定や術後経過について、心配なことがあれば担当医にお気軽にご相談下さいね。
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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