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ICL手術後の白内障手術

[2025.08.29]
ICL(Implantable Collamer Lens)手術は、強度近視に対して有効な視力矯正方法です。近視を減らす手術としてはレーシック(LASIK:Laser in Situ Keratomileusis)もよく知られていますが、角膜を削るレーシックと異なり、角膜の形態を維持しながら将来的にレンズを取り出すこともできるという利点があり、さらにレーシックでは矯正できない強い近視もICL手術では矯正可能であることから近年広く普及するようになりました。
しかしながら、そもそもICL手術が必要な強度近視の方は白内障が進みやすいという側面もあり、さらに、ICL手術を行うことで白内障になってしまう場合もあることから、ICL手術を行った眼の白内障手術がどのようなものになるかよく知っておく必要があります。 この記事では、ICL手術後の白内障手術の流れや注意点について詳しく解説します。
ICLと白内障の関係
ICLは水晶体の前かつ虹彩の後ろのスペースにレンズを挿入する構造になっています。そのため白内障が進行した場合には、白内障手術を行う前にICLを取り出す必要があります。つまり、ICLの摘出+白内障手術という二段階の手術となるのです。
この点が、通常の白内障手術との大きな違いです。ICLを残した状態では水晶体にアプローチできないため、必ず摘出のステップが必要になるのです。
ICL摘出と白内障手術の流れ
実際の手術は以下の手順で行われます。
 ICLの摘出
  • ICLを取り出すのに十分な、3mm程度の傷口を作ります。この傷口は通常の白内障手術で作成する手術創よりやや大きいです。
  • 虹彩裏面に挿入されているICLを虹彩面上に挙上して、水晶体を傷つけないように丁寧に取り出します。
  • ICLは柔らかい素材で作られているため、ティッシュを箱から引きずり出すようなイメージで創口から摘出します。
 白内障手術
  • ICLを取り除いた後、水晶体を超音波で除去し、眼内レンズを挿入します。
  • 基本的な流れは通常の白内障手術と同じですが、手術創がやや大きいためこの点に注意して手術します。
眼内レンズ(IOL)の挿入
  • 付加価値レンズ(多焦点眼内レンズ)を挿入することで、白内障を治療するのと同時に老眼を治療することができる場合があります。裸眼の見え方が良くなることで生活が便利になる可能性があるので、レンズの選択は慎重に行うと良いでしょう。勿論、眼鏡の使用を前提に単焦点眼内レンズを選択することも可能です。
難易度と注意点
ICL手術後の白内障手術は、通常の白内障手術に比べて難易度がやや上がります。
  • 追加の操作 ICL摘出を行うため、通常にはない余計な操作が必要です。創口も3mm程度と、通常の白内障手術で使用する創口より大きくなります。このため、特に多焦点眼内レンズの使用を予定している場合には乱視が出ないように綺麗な切開創を作る必要があります。
  • 眼内レンズ度数の計算 ICL挿入眼では眼内レンズ度数の計算に注意が必要な箇所があります。
手術費用
ICL摘出手術と同時に行う白内障手術の費用は全額自費診療となります。
同時に手術を行うことで眼に対する負担を低減することはできますが、上記のように同時手術ならではの複雑さがあることや、費用が高額になることから、まずはICL摘出手術のみを行い、後日白内障手術を行うこともあります。この場合ICL摘出手術のみが自費診療で行われることになります。
当院でのICL摘出手術の費用は、片眼 15万円+税(16万5千円)です。
上記の費用には手術技術料薬剤代金術後1ヶ月の診療費用を含みます。
 
現状では、そもそもICL手術後の患者さまの白内障手術を行ったことがない医師の方が多いと思います。上記のような様々な注意点があるため、特に多焦点眼内レンズなど繊細なレンズの使用を検討されている方は、手術に習熟していてかつレンズの知識に精通した医師の診察を受けることをおすすめします。
 

記事監修者について

渡辺 貴士
眼科医 渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京科学大学眼科 非常勤講師

大学病院や基幹病院において多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京科学大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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