何か飛んでいる(飛蚊症)
飛蚊症(ひぶんしょう)とは
飛蚊症とは、小さなゴミや虫のようなものが飛んで見える症状で、視線を動かすとその物体も動いて見えます。明るい場所や白い背景で症状を強く感じることがあります。
飛蚊症には生理的な原因によるものと病的な原因によるものがあります。
飛蚊症の検査
飛蚊症の原因を明らかにするためには眼底検査が必要です。瞳孔を開いた状態(散瞳した状態)で眼底検査を行うことで、眼底の状態をより詳細に確認することができます。検査は全て保険適用になります。
散瞳して検査を行った場合には4-5時間程度見え方が不安定になるので、ご自身で車、バイク、自転車などを運転して来院されないようお願いします。
生理的な飛蚊症
硝子体は透明なゼリー状の組織で網膜に接着しています。加齢性の変化によって、①硝子体の線維が変性して混濁を生じたり、②網膜から剥がれたり(後部硝子体剥離)することで、その影が網膜に映って飛蚊症を生じます。
生理的飛蚊症の所見
後部硝子体剥離が生じた際に、もともと視神経乳頭に付着していた硝子体の一部が輪状の混濁として認められ、Weiss ring(ワイスリング)と呼ばれます。
網膜上に存在する血管が、後部硝子体剥離の際に牽引されて出血することがあり、この硝子体出血によっても飛蚊症が生じることがあります。この出血はほとんどの場合には少量で、時間の経過とともに自然に吸収されます。
生理的飛蚊症の治療
生理的な飛蚊症は、放置していても視機能の低下をきたすことは稀であるため、積極的には治療は行わずに様子をみます。一方で、見え方の違和感が強く日常生活に支障をきたしている場合には手術が勧められます。
手術は、飛蚊症の原因になっている硝子体を取り除くための硝子体手術を行います。
生理的な飛蚊症に対する硝子体手術は保険適応外(=自費診療)です。
手術費用は70万円+税(77万円)となります。手術費用には手術技術料、薬剤代金、術後1ヶ月の診療費用を含みます。
病的な飛蚊症
病的な飛蚊症は、放置すると重篤な視機能の低下を引き起こすため、原因に応じて適切な治療を行う必要があります。手術は保険適用になります。
網膜裂孔
網膜裂孔とは、網膜の一部に穴があいた状態で、穴が空いた時に網膜組織の一部や出血が硝子体の空間を舞うことで飛蚊症が生じます。飛蚊症伴う網膜裂孔は網膜剥離に進展することが多いため、レーザー治療が必要です。網膜裂孔の周囲をレーザーで焼き固めることで、網膜が剥がれることを予防します。
網膜剥離(裂孔原性網膜剥離)
網膜剥離(裂孔原性網膜剥離)とは、網膜裂孔から眼内の水(液化した硝子体)が網膜の下に流れ込み、網膜が剥がれる病気です。眼の中心部(黄斑)の網膜が剥がれると治療を行っても視力予後が悪くなるため、緊急の治療が必要な眼科疾患の1つです。
手術には硝子体手術または強膜内陥術(バックリング術)という2つの方法があり、網膜剥離の状態により適切な方法を選択します。
硝子体出血
硝子体出血とは、様々な病気によって眼内に出血が生じた状態で、眼内に舞った出血が動くことにより飛蚊症を生じます。硝子体出血を引き起こす病気には、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性、網膜細動脈瘤破裂などがあります。硝子体手術によって出血を取り除いた上で、出血を生じた原因である病気の治療を行います。
星状硝子体症
星状硝子体症とは、硝子体中に白色や黄白色の粒子状混濁(星状体)が出現した状態です。粒子状の混濁は、リン酸カルシウムやムコ多糖などから構成されており、高齢者や糖尿病の方で認められることが多い病変です。
軽度の混濁であれば自覚症状はなく、多くの場合には眼科を受診した際に偶然発見されます。混濁が高度になり飛蚊症が強い場合には、硝子体手術によって混濁した硝子体を除去します。
記事監修者について
日本眼科学会認定 眼科専門医
東京科学大学眼科 非常勤講師
大学病院や基幹病院において多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京科学大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。