メニュー

角膜ジストロフィ・角膜混濁

角膜混濁とは

角膜はもともと透明な組織ですが、様々な原因で混濁を生じ、混濁の部位や程度によって視力の低下を生じます。

角膜に混濁を生じる疾患のうち、遺伝子異常に起因するものを角膜ジストロフィといいます。角膜ジストロフィは遺伝するため、基本的には家族内で両眼性に発症します。

遺伝ではなく角膜混濁を生じる場合には、角膜感染症(感染性角膜炎)が治癒した後や、角膜の外傷後などあります。また、水疱性角膜症帯状角膜変性などの病気などでも角膜混濁を生じます。
 
 

角膜ジストロフィ

顆粒状角膜ジストロフィ

顆粒状角膜ジストロフィは、境界が明瞭な顆粒状の白色〜灰白色の混濁が角膜の表層から実質に生じる状態です。TGFBI遺伝子の変異が原因として知られており、この遺伝子の変異は他の角膜ジストロフィの原因にもなっています。

TGFBI遺伝子の変異する部位の違いにより、顆粒状角膜ジストロフィには1型と2型に分けられます。日本人では2型が多く、別名はAvellino(アベリノ)角膜ジストロフィとも呼ばれます。常染色体優性遺伝の遺伝形式をとります。

遺伝子は父親由来と母親由来の2つが一組となっており、この2つともに変異がある場合をホモ接合体、1つだけに変異がある場合をヘテロ接合体と呼び、ホモ接合体の方がヘテロ接合体よりも症状が重くなります。

 

上の写真は同じ方の右眼と左眼の写真です。角膜に白色顆粒状の混濁を多数を認めますが比較的まばらな病変であるため視力低下などの自覚症状はありません。下段の角膜表面を拡大した写真では顆粒状の混濁がより明瞭に確認できます。

 

上の写真は白内障手術を行う前の方の写真ですが、顆粒状角膜ジストロフィ(黄色矢印)の混濁があると白内障手術が難しくなります。

治療
初期の顆粒状混濁がまばらである時には視力低下を自覚しないため、治療は不要で経過観察になります。

混濁が密になり視力が低下するような場合には、レーザーを用いて角膜の混濁を除去する治療(PTK)が必要になります。

 

格子状角膜ジストロフィ

格子状膜角膜ジストロフィは、名前の通り格子状の混濁が角膜実質に生じる状態です。顆粒状角膜ジストロフィと同様にTGFBI遺伝子の変異が原因であり、常染色体優性遺伝の遺伝形式をとります。

線状の混濁はアミロイドという物質の沈着によるものです。アミロイドは線維状の異常なタンパク質で、アミロイドが全身の様々な臓器に沈着して機能異常をおこす病気をアミロイドーシスといいます。この全身に症状が出現するアミロイドーシスの一症状として格子状角膜ジストロフィを発症することがあります。

上の写真は同じ方の右眼と左眼の写真です。角膜に比較的太い線状の混濁が生じているのがわかります。

治療
混濁が軽度で視力低下を自覚しない場合には経過観察になりますが、視力低下を自覚したら治療が必要です。

病変が角膜表層に限局していれば、レーザーを用いて角膜の混濁を除去する治療(PTK)が適応になりますが、病変が角膜の深い層に及んでいる場合には角膜移植を行う必要があります。

 

角膜混濁を生じる疾患

老人環

老人環(ろうじんかん)は角膜の周辺部が円周状に白く混濁する状態です。加齢性の変化で、角膜周辺部にリポ蛋白が沈着することで生じると考えられています。病変は周辺部に限局するため、視力に影響を与えることは少なく治療は不要です。

上の写真では、両眼とも角膜の周辺部が白く濁っており(赤矢印)、これが老人環です。一般的には、角膜輪部(結膜と角膜の境界部)には透明な部分が存在しますが、老人環のある部分では不明瞭になります。

 

老人環と白内障

患者様より「最近目が白くなってきました。これが白内障ですか。」と質問を受けた際に、この老人環のことをさしていることがよくあります。

前述のとおり、老人環は角膜周辺部の病変(赤矢印)で、白内障は水晶体の混濁した状態(黄色矢印)の部分となります。

 

Kayser-Fleischer輪

老人環と類似した外観を呈するものにKayser-Fleischer輪(カイザー・フライシャー輪)があります。

銅の代謝異常により全身の臓器に銅が沈着するWilson病では、角膜周辺部に黄白色の混濁が見られ、Kayser-Fleischer輪と呼ばれます。角膜深層のデスメ膜のレベルに銅が沈着したことによる所見です。

 

帯状角膜変性

帯状角膜変性(かくまくたいじょうへんせい)は、角膜の水平方向に帯状の角膜混濁が生じる状態です。角膜のBowman層にカルシウムが沈着することによって生じます。帯状の混濁は周辺部から始まり、次第に角膜中央にむかって進行します。

高カルシウム血症、慢性前部ぶどう膜炎などが角膜帯状変性の原因となります。また、硝子体手術でシリコンオイルを眼内に注入した場合にも生じることがあります。

病変が周辺部にとどまっている間は治療は必要ありませんが、混濁が中央部まで及んだ場合には治療を検討します。

上の写真では両眼とも、角膜の3時と9時方向の周辺部に淡い帯状の混濁(赤矢印)を認めています。
 

上の写真は、帯状変性(赤矢印)に加えて、翼状片(青矢印)も認めています。

記事監修者について

渡辺 貴士
眼科医 渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京科学大学眼科 非常勤講師

大学病院や基幹病院において多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京科学大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

医師の紹介

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME