網膜色素変性
網膜色素変性
視細胞(桿体細胞と錐体細胞)
網膜には光を感じる視細胞という細胞があり、桿体(かんたい)細胞と錐体(すいたい)細胞の2つに分けられます。
桿体細胞は、網膜の周辺部に多く存在しており、物の明るさや広い視野を見る機能を担っています。
錐体細胞は、網膜の中心部である黄斑に多く存在しており、視力や色覚などの繊細な視機能において重要な役割を果たしています。
網膜色素変性とは
網膜色素変性は、網膜が遺伝性に障害される病気です。
網膜色素変性では、主に杆体細胞が障害されるため、暗いところで物が見えにくくなる(夜盲)症状から始まり、進行すると視野が狭くなる(視野狭窄)などを生じます。
さらに病状が進行すると、まぶしく見える、視野全体が白く霞むなどの症状が出現し、最終的には高度の視力低下にいたります。
20歳代で高度の視機能障害を生じる場合や、80歳代でも視力が良い場合など、症状の程度には大きな個人差があります。
網膜色素変性の検査
眼底検査(眼底写真)
眼底自発蛍光検査
眼底自発蛍光検査(萎縮した網膜を鋭敏に観察できる検査)では、萎縮した網膜は明瞭な黒い領域(低自発蛍光)になります。
障害されている網膜の範囲を、眼底写真よりも明瞭に把握することができます。
OCT検査
OCT検査(網膜の断面図をみる検査)では、変性部の網膜において、視細胞が存在する網膜外層が菲薄化している所見を確認することができます。
正常な黄斑のOCT検査では、視細胞の存在を反映して網膜外層には明瞭な白い線を複数認め、網膜外層の厚みも保たれています。網膜色素変性では、視細胞が変性して消失するために、網膜外層は菲薄化し、複数の白い線も消失しています。
網膜色素変性では嚢胞様黄斑浮腫を伴うことがあり、OCTで確認することができます。糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症などに伴う黄斑浮腫は抗VEGF薬硝子体内注射で治療されますが、これの病気とは黄斑浮腫を生じる病態が異なるため、現在は有効な治療がありません。
網膜色素変性(進行例)
進行した網膜色素変性の眼底写真では、網膜全体の色調が中心部(点線内)を除いて粗糙な色調となり、骨小体様色素沈着(黄色矢印)が眼底周辺部に多数存在しています。
下段の眼底自発蛍光写真では、網膜の機能が保たれた中心部の領域(点線内)を除いて、周辺部全体は黒い領域になっており、網膜の障害が広範囲に及んでいることがわかります。
網膜色素変性の合併症
白内障は一般的には加齢と共に水晶体が混濁することで視力が低下する病気ですが、網膜色素変性の方では若い年齢でも白内障が進行し手術が必要になる場合があります。
術後も水晶体嚢が収縮する前嚢収縮が起こりやすく、追加の処置が必要になる場合があります。
記事監修者について
日本眼科学会認定 眼科専門医
東京科学大学眼科 非常勤講師
大学病院や基幹病院において多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京科学大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。