小児近視治療(近視進行抑制)
近視
近視とは
近年、子供の近視人口は増加しており、特にアジア圏で深刻な問題となっています。近視の進行を抑える治療法はさまざま提唱されていますが、科学的なエビデンスがないものも少なくありません。当院では科学的に有効性が認められた治療法の中から、最適な治療法を提案します。
近視の進行抑制
軽度から中等度の近視であれば、眼鏡やコンタクトレンズなどで良好な矯正視力を得ることができますが、高度に進行した強度近視(病的近視)の状態では、近視性牽引黄斑症、近視性黄斑部新生血管、近視性視神経症などを合併することがあり、矯正視力も低下します。
近視進行抑制は、強度近視(病的近視)のリスクを軽減し、将来の視機能を守るために重要です。
当院の小児近視治療
小児の近視治療(近視進行抑制治療)は、新小岩眼科分院で行っています。新小岩眼科(本院)では対応していません。
新小岩眼科分院では、オルソケラトロジー、低濃度アトロピン点眼による治療を行います。多焦点ソフトコンタクトレンズやレッドライト治療は実施していません。
必要な検査
検査の種類
近視進行の程度は眼軸長で判定するため、正確かつ定期的な検査が必要です。また、オルソケラトロジーを行う際には、角膜形状解析検査を行うことで適切なレンズを選択します。
検査機器
当院では、TOPCON社のMYAHという機器を用いて、眼軸長測定や角膜形状解析を行っています。
眼軸長
経時的な眼軸長の変化をグラフ化することで、治療を行わない場合の平均的な眼軸伸長と比較して、どれだけ眼軸伸長が抑制されているのかを一目で確認できます。
角膜形状解析
オルソケラトロジー
オルソケラトロジーは、夜間就寝時に特殊な形状のハードコンタクトレンズを装用して角膜形状を変化させる治療法です。別名、ナイトレンズやナイトコンタクトと呼ばれることもあります。寝ている間に角膜の形状が変化して近視の程度が軽くなるため、日中は眼鏡やコンタクトレンズを使用せずに生活できます。
メリット
・日中に眼鏡やコンタクトレンズの装用が不要になる。
・夜間の治療のみで済むため、親が装用状況を確認しやすい。
・レンズ装用を中止すれば角膜形状は元に戻るので、状況に応じて治療を中断できる。
デメリット
・レンズの適切なケアを怠ると、角膜感染症を起こすリスクがある。
・レンズの装用に伴い、角結上皮障害やアレルギー性結膜炎を生じることがある。
使用するレンズ
現在日本で承認されているオルソケラトロジーのレンズは4種類ありますが、当院ではマイエメラルドというレンズを用いて治療を行います。マイエメラルドは、酸素の透過性が高く、強い角膜乱視にも対応できるプレミアムデザインがあることなどが特徴です。
費用について
オルソケラトロジーを用いた近視の矯正は、健康保険の適用外であり自費診療になります。
適応検査:11,000円(税込)
オルソケラトロジー治療を行うにあたり、眼の状態に問題がないかを確認し、トライアルレンズを用いてレンズのフィッティング確認を行います。
初期費用:両眼176,000円(税込)
適応検査終了後に治療を希望される場合には、初期費用の全額を窓口でお支払いいただきます。
初期費用には、「治療開始後3ヶ月までの診察費用、初回分のレンズケア用品(レンズケース、専用洗浄保存液、スポイト、装着液)」を含みます。
角膜乱視が強く特殊レンズ(プレミアムレンズ)を使用する場合には、初期費用は両眼で198,000円(税込)です。
診察費用:6,600円(税込)
3ヶ月に1回の定期検査を行い、1回あたりの診察費用は上記の通りです。
オルソケラトロジー治療中に、角結膜上皮障害やアレルギー性結膜炎などを生じた場合には、それらの治療に必要な点眼薬は保険適用にはならないため、別途費用が必要です。
低濃度アトロピン点眼
低濃度アトロピン点眼を、1日1回就寝前に点眼する治療法です。点眼薬の治療であるため取り組みやすいこと、副作用が少ないことが特徴です。
メリット
・点眼薬の治療であるため、年少者でも治療をしやすい(コンタクトレンズの使用は年少者では難しい)。
・他の治療法と比較して費用が安い。
・他の治療法と併用できる(オルソケラトロジーと併用した場合には、オルソケラトロジー単独よりも高い治療効果あり)。
デメリット
・瞳孔が広がるために眩しく見える(就寝前に使用すれば問題になることは少ない)。
費用について
低濃度アトロピン点眼薬を用いた近視進行抑制は、健康保険の適用外であり自費診療になります。点眼薬の購入だけでなく、検査に関わる費用も保険適用外です。
点眼薬の費用:4,380円(税込)
当院ではリジュセアミニ点眼液0.025%を用いて治療を行います。
診察費用:6,600円(税込)
3ヶ月に1回の定期検査を行い、1回あたりの診察費用は上記の通りです。
多焦点ソフトコンタクトレンズ
特別な設計が施されたコンタクトレンズを日中に装用する治療法です。
多焦点ソフトコンタクトレンズの装用が近視進行抑制効果をもたらす機序は複数考えられており、真のメカニズムは明らかになっていません。累進屈折型、EDOF型、同心円形などの種類があり、いずれの光学デザインのレンズでも一定の近視進行抑制効果が得られています。
*当院では多焦点ソフトコンタクトレンズを用いた小児の近視進行抑制は実施していません。
メリット
・ソフトコンタクトレンズであるため装用感がよい。
デメリット
治療を希望される方へ
小児の近視治療は、新小岩眼科分院で行っています。新小岩眼科(本院)では対応していません。
治療をご希望の方は、分院まで直接お越しください。
よくある質問
近視はいつまで進行しますか?
近視進行が安定化する(=眼軸長の伸長が止まる)まで治療を行います。個人差が大きいものの、18歳頃までに約8割の方で近視の進行は安定化するため、この時期が近視進行抑制を終了する目安になります。
しかし、20歳以降でも近視が進行する場合があり、治療を終了するタイミングには注意が必要です。
複数の治療を同時に行うことはありますか?
オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼は同時に行うことがあります。同時に治療を行うことで、それぞれの治療を単独で行うよりも、近視の進行抑制効果は高くなります。
記事監修者について

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京科学大学眼科 非常勤講師
大学病院や基幹病院において多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京科学大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

