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網膜剥離

網膜剥離(裂孔原性網膜剥離)とは、網膜に穴(網膜裂孔)があき、この穴から眼の中の水(液化した硝子体)が網膜の下に流れ込み、網膜が剥がれてしまう病気です。目の中心部(黄斑)の網膜が剥がれてしまうと治療を行なっても視力予後が悪くなるため、緊急の治療が必要な眼科疾患の1つです。

網膜剥離の症状としては、網膜に穴が空いた時に飛蚊症(黒い点が動いて見える)を自覚することがあります。その後、網膜剥離の範囲が拡大すると視野の一部が見えにくくなってきますが、人間は両眼でみている時には片眼の見えない範囲を補いあってしまうので、視野欠損の範囲が狭いうちは症状を自覚しにくいことがあります。目の中心部(黄斑)の網膜が剥がれてしまうと急激な視力低下に至ります。

 

 

治療について

網膜剥離の手術方法には、硝子体手術強膜内陥術(強膜バックリング術)という2つの方法があり、網膜剥離の状態により手術の方法を選択します。

①硝子体手術

50歳代以降の網膜剥離では、網膜に穴があいてしまう原因の多くは後部硝子体剥離です。後部硝子体剥離とは、眼の中の硝子体(ゼリー状の組織)が加齢とともに液化して収縮する時に、もともと接している網膜から剥がれる現象ですが、時々網膜との癒着が強いために網膜に穴があくことがあります。

硝子体と網膜の癒着が原因となっているので、硝子体手術により眼の中にある硝子体を全て取り除くことで、網膜を引き剥がそうとする力をなくします。網膜の下に溜まった水も取り除き、網膜裂孔からは新たな水が入りこまないように裂孔の周囲の網膜をレーザーにより焼き固めます。さらに、網膜が元の位置にしっかり接着するまでの期間は、目の中にガスや空気を充填することで網膜を押し当てることが必要となります(目の中に水と空気がある場合に、水より軽い空気の方が上の方に浮き上がろうとする力を利用して網膜を押し付けます)。

手術後には眼内に注入したガスを適切な位置の網膜に押し当てるために、一定期間うつ伏せなどの姿勢を取って頂くことが必要になります。この術後の体位維持が網膜剥離の治療においては非常に重要となります。

※体位維持について、従来は術後1週間程度の厳格なうつ伏せ姿勢の継続が必要とされていましたが、当院では、網膜剥離の状態によっては術後早期からうつ伏せ以外の体位に変更して頂くことで、患者様の術後の負担を軽減するだけでなく、より網膜剥離の治療に有利な環境を作ることを目指しています。詳しくはこちら

▶︎硝子体手術について

②強膜内陥術(強膜バックリング術)

20歳代前後の網膜剥離では、もともと網膜の構造に脆弱な部分があり、そこに穴が形成されることで網膜剥離に進展します。50歳代以降の場合とは異なり、硝子体が液化して収縮するような変化ではないので、穴に水が流れこみにくく病態の進行は遅いです。

眼の外側からスポンジ状の物質を押し当てることで、剥離して浮いている網膜を接着させます。また、網膜の穴から再び新たな水が流れ込まないように、眼の外側から冷凍凝固という方法を用いて穴の周囲の網膜を焼き固めます。

 

術後合併症

一般的な硝子体手術の合併症に加えて、網膜剥離は初回の手術が成功しても、一定の確率で再発(再剥離)することがあります。

下記の症例では、初回は上方の網膜裂孔を原因として網膜剥離が起こりました。初回の硝子体手術では、網膜を元の位置に直し、網膜裂孔の周囲にレーザー治療を行い、眼の中にガスを入れました。術後の経過は良好だったものの、下方に新たな網膜裂孔が生じて下側からの網膜剥離が生じてしまいました。2回目の硝子体手術を行ったところ、網膜剥離はしっかり治癒しました。

 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

▶︎医師紹介

 

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