翼状片・瞼裂斑
翼状片(よくじょうへん)
翼状片とは
通常は角膜(黒目)と結膜(白目)のには明確な境界が存在しますが、結膜下の組織が異常に増殖して角膜との境界を乗り越えて、角膜内に侵入した状態が翼状片です。
鼻側の角膜に生じやすいです。原因は不明ですが、紫外線との関連性が指摘されています。
軽度の翼状片であれば、見た目(整容面)の変化があるだけで、視力などには影響はないので治療の必要はありません。しかし、次の項目に挙げたような自覚症状がある場合には手術によって翼状片を取り除くことが必要になります。
上記の左側の写真では、角膜上の翼状片組織は薄く、翼状片の向こうの組織を透けて確認することがきます。一方で右側の写真では、翼状片組織が非常に分厚く充血しているのがわかります。このように翼状片組織が分厚く充血している場合には手術を行なっても再発する可能性が高いため注意が必要です。
自覚症状
①視力低下
翼状片組織が瞳孔(光の通り道)まで侵入すると、見え方が悪化するため手術が必要となります。そして、手術により翼状片を取り除くことができても、もともと翼状片が進展していた角膜には混濁が残ることが多いため、角膜の中心近くに進行する前に手術を行うことが必要です。
また、目の中心近くまで翼状片が侵入していなくても、翼状片が角膜の形状をゆがめてしまう(角膜乱視が強くなる)場合にも視力低下を来すので手術適応となります。
②異物感、刺激感
翼状片により目の表面が不整になるため、涙のバランスが悪くなり異物感を感じることがあります。特に炎症を伴って、結膜に充血が生じるような場合には、異物感が増すこともあります。
翼状片の手術
手術により、翼状片組織を除去します。手術は点眼麻酔(目薬の麻酔)と結膜下麻酔(結膜の下に麻酔薬を注射)によって行います。
異常な翼状片の組織を、その周辺の正常な結膜の組織も一部含めて切除します。翼状片切除により開いてしまった結膜の傷口を縫い合わせて終了となります。
巨大な翼状片のために、正常な結膜の欠損が大きくなってしまった場合には、正常な他の結膜から結膜を一部移植することもあります。
翼状片手術の合併症
・再発:翼状片は術後の再発が多いことが知られており、問題なく手術が行われていても再発することがあります。翼状片が再発した場合には初回よりも組織の癒着が強くなり、再手術時の手術は難しくなるため、別の術式の検討なども必要になります。
翼状片の再発は「40歳以下、翼状片の組織が分厚い方」で特に多いとされています。若い年齢(20-40歳)での手術を検討する場合には注意が必要です。
・視機能低下:翼状片組織を取り除いても、角膜に残存した混濁や、角膜の形状がゆがんだまま(角膜乱視が残る)になることで、見え方に多少の違和感が残存する可能性があります。
瞼裂斑(けんれつはん)
瞼裂斑とは
瞼裂斑は、角膜に隣接する結膜に生じる黄白色の隆起性病変です。角膜を時計に見立てた時に、3時と9時の位置において生じやすいです。40歳以降から出現し、加齢と共に高齢者では多くの方にみられます。紫外線を浴びることで、結膜に組織に変性が起こることが原因として考えられています。瞼裂斑は翼状片の前段階として考えられていますが、未だに因果関係ははっきりしていません。
自覚症状
瞼裂斑があっても自覚症状を感じる方はほとんどおらず、瞼裂斑が大きくなった場合に異物感を生じることがあります。時々、瞼裂斑の周囲に充血を伴った瞼裂斑炎を生じると目の違和感を感じるようになり、症状の程度によりステロイド点眼の治療が必要となることがあります。
瞼裂斑の隆起により、角膜の一部において涙が局所的に行き渡らず乾燥してしまうと、デレン(Dellen)と呼ばれる角膜潰瘍様の状態となることがあります。
上記は瞼裂斑が炎症を起こした前後の写真です。瞼裂斑炎を生じた際には、瞼裂斑の周囲に強い充血を生じているのが分かります。
治療について
瞼裂斑自体を取り除くことは通常は必要ありませんが、大きさや自覚症状の程度に応じて切除摘出を行うことがあります。
記事監修者について
日本眼科学会認定 眼科専門医
瞼の手術や涙道の治療を行う眼形成外科を専門としています。特に眼瞼下垂手術を得意としており、眼科専門医として眼の機能を第一に考えながら、整容面にも最大限配慮した治療を心がけています。