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高血圧網膜症

高血圧網膜症

高血圧とは慢性的に血圧が高い状態ですが、ほとんどの方は症状を自覚することがありません。しかし、血圧が高い状態が続くと血管に負担がかかり血管の壁が硬くなる(動脈硬化)が進行し、最終的には脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などの重篤な病気にいたります。

網膜の血管は、全身で唯一血管を直接観察できる部位です。動脈硬化の程度は、頸動脈エコー検査などで調べることができますが、眼底検査では直接血管の状態をみてその程度を確認することができるます。

検査所見
高血圧が持続すると、網膜動脈は細くなりますが、これは血管が収縮する可逆的な変化であるため、適切な高血圧の治療を行うことで血管の太さは元に戻ります。

その後も高血圧の状態が持続すると、血管の内腔が狭窄する不可逆的な変化(動脈硬化)を生じます。

動脈硬化の程度によって、眼底の網膜血管は下の写真のような所見を示します。

1)動脈硬化を生じた血管の壁は透明性が減少するため、動脈壁が全体的に白っぽく見える(血柱反射の亢進

2)動脈硬化により弾力を失い硬くなった動脈が、柔らかい静脈を押しつぶすことで、静脈の血管が途切れたように見える(動静脈交叉現象)。

3)循環不全を生じた血管から漏出する変化が起こることで、出血や白斑が生じる。

 
症例写真

重症の高血圧を背景に、左眼に特徴的な動脈硬化所見である血柱反射の亢進(黄色矢印)や、動静脈交叉現象(青矢印)を認めます。

動静脈交叉現象では網膜静脈が圧排されるため、網膜静脈が閉塞する網膜静脈閉塞症を発症する可能性が高くなります。

右眼では、陳旧性の網膜静脈閉塞症に対して以前にレーザー治療が施行されていましたが、新生血管からの硝子体出血(赤矢印)を認めました。

 

腎性網膜症

腎臓の機能が低下すると血圧が高くなります(腎性高血圧)。腎性高血圧によって、眼底に出血や浮腫などを生じた状態を腎性網膜症といいます。

下の写真では、動脈硬化の所見に加えて、硬性白斑や視神経乳頭浮腫などの所見も認めており、高血圧による血管障害が強いことが示唆されます。

 

妊娠高血圧症候群

妊娠中に高血圧になった場合を、妊娠高血圧症候群と呼びます。妊娠中の血圧上昇に伴い、眼底に出血や浮腫などを生じます。妊娠を契機に視力低下や見え方の違和感を感じた場合には、血圧変化に伴う症状の可能性があるため眼科での精査が必要です。

降圧薬の使用や、妊娠の終了に伴い眼底の所見は改善が得られることが多いです。
 
 
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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