クラレオンパンオプティクス (Clareon PanOptix)
クラレオンパンオプティクス(Clareon PanOptix)は、Alcon社が開発した3焦点の回折型多焦点眼内レンズです。もともとアクリソフパンオプティクスとして2019年に承認されたレンズですが、材質を変更して2022年よりクラレオンパンオプティクスとして発売されました。この材質の変更によって、さらに透明度の高いレンズになり、よりクリアな見え方を実現しています。
クラレオンパンオプティクスは遠方、中間(60cm)、近方(40cm)の3カ所にピントが合う3焦点レンズです。ほとんどの場面で眼鏡を必要とせずに生活することができます。
欠点としては、メーカー提供の焦点深度曲線によれば、遠方から中間(60cm)のちょうど間くらいにあたる1mの距離でやや視力の落ち込みがあることと、40cmよりさらに近方ではやや視力が出にくい点が挙げられます。40cmの距離では良好な視力が得られることが報告されており、ほとんど問題にならない場合が多いと考えられますが、手元の見え方に強いこだわりがある場合には注意が必要です。
ハロー・グレアやコントラスト感度の低下はみられるものの、程度としてはほどほどに抑えられた設計になっています。上記の写真は、左側の単焦点眼内レンズに対して、右側はクラレオンパンオプティクスで生じるハロー・グレアの程度を示した写真です。
クラレオンパンオプティクスの特徴としては、
・遠方、中間(60cm)、近方(40cm)の3カ所にピントが合う点
・ハロー、グレアはほどほどに出る点
・40cmよりさらに近方ではやや視力が出にくい点
これらが挙げられます。日常生活のほとんどの場面で便利な、バランスのよいレンズと考えます。乱視矯正レンズ(トーリック)も使用可能です。
クラレオンパンオプティクスは選定療養対象の多焦点眼内レンズです。手術費用については健康保険が適用されますが、多焦点眼内レンズ代金および多焦点眼内レンズ挿入に必要な追加検査費用については全額自己負担となります。
当院における選定療養対象多焦点眼内レンズ使用にかかる自己負担額は、レンズの種類や乱視矯正の有無にかかわらず一律で片眼 30万円+税(33万円)です。
記事監修 眼科医 渡辺 貴士
日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師
大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。