ドライアイ
ドライアイとは
ドライアイとは、目の表面をうるおしている涙液量の不足や涙液の層が不安定になることで、目の渇きや目の違和感(ゴロゴロする、ヒリヒリする)などを感じる病気です。涙の不足により目の表面が傷ついてしまうと、視力の低下を生じることもあります。
ドライアイの原因には様々なものがありますが、パソコンやテレビなどを長時間見るような生活では、まばたきの回数が減り涙が蒸発しやすくなるためドライアイを生じやすくなります。また、コンタクトの長時間の使用も目の表面の涙のバランスを損なうためドライアイになりやすいです。
ドライアイの診断
通常の顕微鏡の観察では涙の詳しい評価を行うことはできないため、目の表面に特殊な薬(フルオレセイン)をつけて涙を可視化することで、涙の安定性を確認します。目を開けた瞬間に目の表面全体を潤していた涙がどのぐらいの時間で干上がってしまうか(涙液層破壊時間:break up time)を計測したり、眼表面に傷がついているかなどを観察します。
ドライアイ研究会により示された診断基準では、①眼の不快感や見え方の違和感などの自覚症状があること、②涙液層破壊時間(break up time:BUT)が5秒以下であることの2点を満たした状態がドライアイとされています。
上記の左側の写真では、目を開いて間もなくの時点で涙が乾く領域が出現しており典型的なドライアイの所見です。目の表面に目立った傷は認めません。
一方で、右側の写真のように重症なドライアイに至ると目の表面に多数の傷がつき、目の違和感に加えて視力の低下も伴うことがあります。
ドライアイの治療
点眼治療
ドライアイの治療の基本は点眼薬になります。点眼薬には「ヒアレイン点眼液®︎、ジクアス点眼液®︎、ムコスタ点眼液®︎」などの複数の処方薬があるため、患者様の症状に応じて使い分けます。
また、薬局で購入できる点眼薬の中では、涙液の成分に近い性質を持つソフトサンティア®︎がよく使用されます。
涙点プラグ
点眼薬による治療だけでドライアイ症状が改善しない場合には、涙点プラグという治療方法があります。
涙は、涙腺で産生されて目の表面を潤した後、涙点(上涙点・下涙点)に流れこみ、最終的には鼻の方に流れていきます。点眼薬を使用した後にのどの奥に苦味を感じることがあるのは、このように涙が鼻から最終的にのどの方へと流れていく経路があるためです。
涙点プラグは、目の表面から涙が流れ出ていく涙点をふさぎ、涙の流出量を減らすことで目の表面をうるおす治療です。
涙点プラグには、①シリコーン製の涙点プラグと、②アテロコラーゲン製の涙点プラグの2種類があります。
シリコーン製涙点プラグ
シリコーン製の涙点プラグは、長期にわたって涙点を閉鎖できる点が優れていますが、涙点プラグが眼表面に接して異物感感じる場合や、プラグが外れたり涙道内に迷入したりする可能性があります。
アテロコラーゲン製涙点プラグ
アテロコラーゲンとは、コラーゲンを医療用に安全に使用できるようにしたものです。アテロコラーゲンを涙小管内に詰めることによって、涙の流出を防ぎます。有害事象が特にない点が優れていますが、涙小管内に詰めたアテロコラーゲンは徐々に流れ消失してしまうため、繰り返しの治療が必要になる点がデメリットです。
当院ではキープティア®︎と呼ばれる製品を使用して治療を行っています。
マイボーム腺機能不全とは
ドライアイの原因の1つにマイボーム腺機能不全(MGD)という状態があります。まぶたの縁(眼瞼縁)には、目の表面の涙が乾かないように油分(脂質)を分泌している組織(マイボーム腺)があります。このマイボーム腺からの油分の分泌が悪くなると、涙が蒸発しやすくなりドライアイの状態に至ります。
また、油分が詰まったマイボーム腺内には炎症が起こりやすくなり、眼瞼縁に炎症を生じたマイボーム線炎ではまぶたの縁の違和感や不快感を感じることがあります。
上記の写真では、マイボーム腺の出口部分において油分が詰まって白く固まっているのが分かります。また、マイボーム腺開口部付近の瞼縁は炎症を起こして充血している所見も認められます。
マイボーム腺梗塞
マイボーム腺機能不全に関連した病態としてマイボーム腺梗塞があります。マイボーム腺の導管内に透明または黄白色の固形物が生じた状態です。マイボーム線の分泌物である脂質が固形化することや、脱落した導管の上皮が脂質と濃縮することにより生じると考えられています。
通常は無症状ですが、下記の症例では異物感を生じていることから、局所麻酔下で切開摘出を行いました。右側が術後2日目の写真ですが、透明と黄白色のマイボーム線梗塞が取り除かれているのが分かります。
記事監修 眼科医 渡辺 貴士
日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師
大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。