多焦点眼内レンズ「Mini WELL(ミニウェル)」
[2023.12.28]
Mini WELL(ミニウェル)という多焦点眼内レンズについて解説します。
このレンズはとにかくハロー・グレア(多焦点レンズ特有の、光がにじんだり、まぶしく見える現象)が少ないことが特徴です。回折型多焦点眼内レンズにみられるような光学的エネルギーの損失が極めて少ないため、コントラストも良好です。Mini WELLはEDOF(焦点深度拡張型)レンズであり、独自のウェーブフロント技術(回折のない波面デザイン)によりこのような見え方を実現しており、多焦点眼内レンズ特有の不快な現象をなるべく避けたい方、夜間の車の運転や暗所での作業が多い方、スポーツが好きな方にはおすすめのレンズの1つです。
Mini WELLにはMini WELL Ready(ミニウェル レディ)とMini WELL PROXA(ミニウェル プロクサ)の2種類のレンズがあります。
Mini WELL Readyは、先に発売されたレンズで、上記のようにハロー・グレアが少なく、コントラストが良好でとても見え方の質が良いのですが、手元の見え方がやや弱いのが弱点でした。手元の細かい作業の際に老眼鏡を装用しないといけない場合があり、これを解決するために開発されたのがMini WELL PROXAです。
下図に示されるているのがMini WELL ReadyとMini WELL PROXAの構造の違いで、Mini WELL Readyでは近方40-45cmまでが見えやすいのに対して、Mini WELL PROXAでは近方30-35cmまでが見えやすく、Mini WELL PROXAではより近方の見え方に特化した構造であることが分かります。
Mini WELL ReadyはEDOFレンズの中では手元の見え方は良いものの、両眼にMini WELL Readyを挿入するとどうしても近方の見え方が弱い場合もあるので、優位眼(利き目)にMini WELL Readyを、非優位眼にMini WELL PROXAを挿入するWell FUSION™という方法を用いることにより、両眼が苦手な部分を補い合って近方から遠方まで自然に見えるようにすることができます。
欠点としては、Mini WELL PROXAには乱視矯正レンズがないため、Well FUSION™は「非優位眼において角膜乱視が少ない方」にしか適応にならないということです。その点、同じ焦点深度拡張型(EDOF)レンズであるEVOLVE(エボルブ)については、角膜乱視まで含めて1度単位でオーダー可能な上に、非常に幅の広いレンズパワーからレンズの度数を細かくオーダーできるため、当院ではEVOLVEの使用も選択肢に入ることもお伝えしています。
また、Mini WELLは国内未承認レンズであるため、手術費用が全額自費診療となり、高額であることも欠点のひとつです。
興味のある方は担当医にお気軽にご相談下さいね。
費用について
当院での国内未承認レンズを使用した手術の費用は、乱視矯正の有無にかかわらず一律で片眼 80万円+税(88万円)です。
上記の費用には眼内レンズ代金、手術技術料、薬剤代金、術後3ヶ月の診療費用を含みます。
また、手術前検査の際に術前検査費用3万円+税を申し受けます。
リスク・副作用について
ミニウェルを用いた白内障手術では、一般的な白内障手術と同様に細菌性眼内炎、駆逐性出血、水疱性角膜症、術後屈折誤差、高眼圧、黄斑浮腫、虹彩損傷、結膜下出血、後発白内障などの合併症があります(詳しくはこちらをご覧ください)。術後は多焦点眼内レンズ特有のハローやグレアなどの見え方が気になる場合があります。
後嚢破損やチン氏帯断裂などにより眼内レンズの縫着が必要となった場合には、多焦点眼内レンズが適応にならずに単焦点眼内レンズの挿入に切り替わる可能性があります。
医薬品医療機器等法について
この治療で使用されるミニウェルは医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医療機器です。当院では、イタリアのSIFI Medtech社で製造されたものを個人輸入しております(個人輸入された医薬品等の使用によるリスクに関する情報はこちらをご覧ください)。国内においては承認されている同一の医療機器はありません。安全性については、EUにおいて製品の安全面を保証するCEマークを取得しております。未承認医薬品等であるため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
記事監修 眼科医 渡辺 貴士
日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師
大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。