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おすすめの多焦点眼内レンズ 2024年の最新情報

[2024.01.08]
白内障手術の際に多焦点眼内レンズを挿入することで、手元も遠くも見えるようになり、眼鏡に頼らずに生活できるようになります。当院ではおおよそ5人に1人の方が多焦点眼内レンズを選択されています。
視神経や網膜に病気があったり、角膜の形態が不整であるなどの理由でそもそも多焦点眼内レンズが適応にならない方もおられますが、眼の状態やライフスタイルが合っていれば、多焦点眼内レンズは非常に優れた選択肢であると言えます。
 
一方で、多焦点眼内レンズは種類が非常に多く、「結局どのレンズがいいの?」というご相談を受けることがあるため、これについて2024年現在の最新情報をもとにご説明したいと思います。
 
まず、多焦点眼内レンズには大きく分けて国内承認レンズ国内未承認レンズの2種類があり、国内承認レンズでは選定療養という制度を使えるため、費用負担を抑えることができます。一方で、国内未承認レンズは全額自費診療になるため、費用が高額になります。選定療養対象の国内承認レンズはコストパフォーマンスが良く、自費診療の国内未承認レンズは高性能というかたちです。
 
①選定療養対象の国内承認レンズ
非常に多くのレンズが発売されていますが、現状ではテクニスシナジー(TECNIS Synergy)クラレオンパンオプティクス(Clareon PanOptix)ファインビジョンHP(FINEVISION HP)の中から選ぶのが一般的だと思います。
三者の中からどれを選択するかは、執刀医の好みにも依るところがあり、どれを選択してもものすごく大きな差はないのではないかと思います。一般的には、遠方から近方までしっかり見えるのがテクニスシナジーとファインビジョンHPで、ハロー・グレア(光がにじんだり、まぶしく見える現象)が少ないのはファインビジョンHPとクラレオンパンオプティクスという説明がなされることが多いです。ファインビジョンHPは構造上、暗所では近方が見えにくくなる弱点があり、手元をしっかりみたい方にはテクニスシナジーが向いていると思います。また、ファインビジョンHPは60cm程度の中間距離の見え方がやや劣ります。
 
多焦点眼内レンズでは構造上必ず光のロス(損失)が生じてしまい、このことがコントラスト感度の低下などにつながります。クラレオンパンオプティクスでは12%ファインビジョンHPでは14%のロスが起こり、テクニスシナジーについては公表されていません。
 
テクニスシナジーとパンオプティクスには乱視矯正レンズ(toricレンズ)の設定がありますが、ファインビジョンHPでは乱視矯正レンズの販売がないため、乱視を矯正する必要がある場合はテクニスシナジーとクラレオンパンオプティクスから選びます。
 
また、クラレオンビビティ(Clareon Vivity)という多焦点眼内レンズが近年発売され、これは遠方から中間まで見える構造のレンズで、コントラスト感度の低下や、ハロー・グレアが少ないため網膜や視神経に病気がある方にも使える特徴がありますが、手元がやや見えにくいという弱点があります。乱視矯正レンズの販売はありません。
 
②自費診療の国内未承認レンズ
現状圧倒的に性能が良いのが5焦点レンズであるインテンシティ(Intensity)です。遠方から近方まで5カ所に焦点が合い、独自の構造により光のロスが6.5%と驚異的な少なさであり、選定療養対象の国内承認レンズの概ね半分程度であることから、コントラストも良好です。乱視矯正レンズも設定されているため、乱視のある方にも使用可能です。ハロー・グレアは構造上どうしても生じてしまいますが、他の回折型レンズと比較しても高度ではありません。術後の満足度は非常に高いです。
 
インテンシティと並ぶ高性能なレンズとして、エボルブ(EVOLVE)が挙げられます。このレンズは完全オーダーメイドのレンズで、強度近視の方にも対応しており、乱視の度数も1度単位でオーダーできる特徴があります。また、見え方の特徴としてはハロー・グレアが極めて少なくコントラストがとても良いという特徴があり、夜間の運転や、暗所での作業が多い方におすすめです。理論上の数値ではやや手元の見え方が弱くなる特徴のあるレンズですが、理論値よりも手元の見え方の満足度が高い傾向にあるようです。
 
エボルブと同じEDOF(焦点深度拡張型)レンズである、ミニウェル(Mini WELL)も非常に人気があります。Well FUSION™という方法でレンズを選択し、手元から遠くまで、ハロー・グレアのほぼない自然な見え方が期待できます。コントラストも良好です。乱視の程度によっては適応にならない場合がある点に注意が必要です。
 
多数ある国内未承認レンズの中でも、現状では上記3種類のレンズが圧倒的に優れていて使いやすく感じており、とにかく手元から遠くまではっきり見たい場合はインテンシティハロー・グレアが嫌な方はエボルブかミニウェルを選択されると良いかと思います。
 
前述の通り、国内未承認レンズは非常に高性能である一方で費用が全額自費診療で高額になるのが欠点です。
 
当院での国内未承認レンズを使用した手術の費用は、乱視矯正の有無にかかわらず一律片眼 80万円+税(88万円)です。
上記の費用には眼内レンズ代金術前検査費用手術費用薬剤代金術後3ヶ月の診療費用を含みます。
 
2024年1月現在における、多焦点眼内レンズの選び方をあえて簡潔に、わかりやすさを優先してまとめてみました。
眼内レンズは原則として一生物ですから、後悔のないように最適なレンズを選びたいものですよね。多焦点眼内レンズの使用を検討されている方はお気軽にご相談くださいね。
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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