アドオンレンズ(追加眼内レンズ)
[2024.03.20]
すでに白内障手術を受けて眼内には単焦点レンズが入っているものの、やはり術後に多焦点レンズに変更したいという場合に、アドオンレンズ(追加眼内レンズ)を挿入することで希望の見え方を実現できることがあります。
また、手元にピントが合う単焦点レンズが入っている状態の眼に、アドオンレンズを挿入して遠くにピントが合う状態にしたり、乱視が残っている眼にアドオンレンズを挿入して乱視を矯正することもできます。
すでに白内障手術を受けて眼内レンズが入っているものの、術後時間が経ってから生活様式の変化などによってレンズの種類を変更したいという方は少なくありません。このような場合、まずは白内障手術のやり直し(眼内レンズの交換)を検討します。しかしながら、時間が経って高度にレンズの癒着が進んでいたり、後発白内障手術(YAGレーザー手術)を受けてレンズを包む袋に穴が開いていたり、初回の白内障手術でレンズを包む袋に傷がついていたりした場合、眼内レンズの交換が行えないことがあります。そのような方にはアドオンレンズの挿入をすることで、まるでレンズを交換したように、レンズの機能を変えることができます。
手術の手順は、点眼薬で麻酔を行い、角膜に2.4mm程度の切開を施します。この切開創よりアドオンレンズを挿入します。アドオンレンズを虹彩の下に固定してから眼内を洗浄して、手術を終了します。手術の所要時間は5分程度で、痛みを感じることはほとんどありません。
当院で採用しているアドオンレンズはCamellens2というレンズで、イタリアのSoleko社という眼内レンズメーカーが制作しているものです。近視、遠視の度数変更はもちろん、乱視の矯正や多焦点眼内レンズへの変更も可能です。レンズを固定する支持部の構造が長く設計されており、眼内に固定する際の安定性が高いことが特徴です。また、Camellens2の多焦点モデルを選択した場合、レンズの構造は屈折型の焦点深度拡張型(EDOF)レンズであり、これは同じSoleko社製の非常に優秀な多焦点眼内レンズであるEVOLVEに採用されている技術を使用しているため、ハロー・グレアの少ない自然な見え方が期待できます。
アドオンレンズ手術は、眼の中のスペースが広い方や、初回白内障手術における眼内レンズの固定が良好な方に向いている手術です。一方で、眼の中のスペースが狭い方や、初回白内障手術における眼内レンズの固定が不安定な方は適応にならないため、アドオンレンズ手術の適応については診察で慎重に見極める必要があります。
アドオンレンズ手術のデメリットとして、保険適応外の治療になるため自費診療となり、費用が高額になる点が挙げられます。
興味のある方は担当医にお気軽にご相談下さいね。
費用について
当院でのアドオンレンズ手術の費用は乱視矯正の有無にかかわらず一律で下記の通りです。
・単焦点レンズ 片眼 40万円+税(44万円)
・多焦点レンズ 片眼 50万円+税(55万円)
上記の費用には眼内レンズ代金、手術技術料、薬剤代金、術後3ヶ月の診療費用を含みます。
また、手術前検査の際に術前検査費用3万円+税を申し受けます。
リスク・副作用について
アドオンレンズを用いた手術では、細菌性眼内炎、駆逐性出血、術後屈折誤差、高眼圧、黄斑浮腫、角膜混濁、前房出血、虹彩損傷、結膜下出血などの合併症があります。多焦点レンズを挿入した場合には、ハローやグレアなどの見え方が気になる場合があります。
水晶体嚢やチン氏帯などが障害されていると、既存の眼内レンズが落下することがあります。この場合にはアドオンレンズは挿入できないため、状況に応じて硝子体手術や眼内にレンズを縫着する手術が必要になります。
医薬品医療機器等法について
この治療で使用するアドオンレンズはCamellens2というレンズで、医薬品医療機器等法上の承認を得ていない未承認医療機器です。当院では、イタリアのSOLEKO社で製造されたものを個人輸入しております(個人輸入された医薬品等の使用によるリスクに関する情報はこちらをご覧ください)。国内においては承認されている同一の医療機器はありません。安全性については、EUにおいて製品の安全面を保証するCEマークを取得しております。未承認医薬品等であるため、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
記事監修 眼科医 渡辺 貴士
日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師
大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。