メニュー

テクニスオデッセイ (TECNIS Odyssey)

[2024.09.29]
テクニスオデッセイ(TECNIS Odyssey)はJohnson&Johnson社より2024年11月に発売となる予定の多焦点眼内レンズで、テクニスシナジーの後継モデルという位置付けです。当院は多焦点眼内レンズを使用した白内障手術の実績が多く、テクニスオデッセイの先行使用施設に選ばれています。そのため当院では発売前よりテクニスオデッセイを使用することができます。レンズの構造はテクニスシナジー同様に連続焦点レンズであり、回折型多焦点眼内レンズに分類されます。連続焦点レンズというと少しわかりにくいのですが、3焦点レンズと似たようなレンズであると考えるとイメージしやすいと思います。テクニスオデッセイの特徴と、テクニスシナジーとの違いについて解説します。
 
①高精度な表面設計
テクニスオデッセイの表面には、回折型レンズならではの縞模様(回折格子)が見られます。これはテクニスシナジーから引き継がれた構造ですが、この縞模様がテクニスオデッセイではより滑らかになっています。写真で見ると一目瞭然ですが、テクニスシナジーの方が縞模様がくっきり目立っているのが分かりますね。この縞模様が滑らかになったことで、ハロー・グレアなどの異常光視症が軽減しました。
 
 
②連続焦点
テクニスオデッセイはテクニスシナジーと同じ回折型の連続焦点レンズです。焦点深度曲線は以下の通りです。近方から遠方まで視力が出ており、他社3焦点レンズと比較しても遜色ないことが分かります。一方で、前述の表面設計が滑らかになったことにより、手元の見え方がテクニスシナジーに比較してやや不十分である可能性があり、手元の見え方を重視する場合には注意が必要です。
 
 
③残余屈折に対する耐性
眼内レンズを挿入するときには、それが単焦点レンズでも多焦点レンズでも術後屈折誤差という現象が問題になります。術後屈折誤差とは、術前に想定したピントの距離と、実際にピントが合う距離に乖離が出てしまう現象です。近年は、新しい設備を導入していて、かつ適切なレンズ度数の計算式を用いれば、問題になるような大きな誤差が生じることはごく稀ですが、特に多焦点眼内レンズを挿入する際には裸眼の状態での見え方を重視するため、わずかな術後屈折誤差もなくす必要があります。テクニスオデッセイではこの術後屈折誤差が問題になりにくい設計(よく見える範囲が広いので、誤差に強い)になっているため、良好な裸眼視力を目指しやすくなっています。これをJohnson&Johnson社は「残余屈折に対する高い耐性」と表現しています。
 
④コントラスト感度が比較的良好
回折型多焦点眼内レンズの弱点の一つに、色の鮮やかさが落ちてしまうということがあります。これをコントラスト感度の低下といいますが、テクニスオデッセイではこの低下が比較的抑えられています。明所でも暗所でもコントラスト感度がある程度保たれていることが下のグラフ(同社単焦点レンズや他社多焦点レンズとの比較)から見てとれます。
 
 
⑤ChromAlignテクノロジー
色収差という概念があり、眼に入ってくる光の色成分が角膜や眼内レンズで屈折する際に、色成分ごとにそれぞれ違う距離に像を結ぶことにより、このズレによってピントがぼけてしまう現象を指します。(非常に専門的で理解が難しい概念です)テクニスオデッセイでは、ChromAlignテクノロジーといって、眼内レンズが色収差を打ち消すような構造となっており、これにより色収差が少なくなり、くっきり物を見ることができるようになります。
 
 
以上がテクニスオデッセイの主な特徴です。ハロー・グレアが抑えられておりとても使いやすいレンズである一方で、テクニスシナジーよりは近方の視力がやや出にくいようなので、患者さんが重視していることや、もともとの屈折度数などに十分注意した上で使用する必要があると考えています。
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

▶︎医師紹介

 
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME