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白内障手術をしたのによく見えるようにならない場合

[2024.09.18]
白内障手術をしたのによく見えるようにならない」「白内障手術をしたら見えにくくなった」という話を聞くことがあります。一般に白内障手術は見え方が良くなる手術ですから、手術をしたのに見えるようにならないというと、「手術を失敗したのではないか」と不安になる方もいらっしゃると思います。勿論眼の中の状態は患者さんによって異なるので、診察してみないと何が起こっているか説明することはできないのですが、このような場合に考えられる状況について解説します。
 
①視神経や網膜などに病気がある
白内障手術は混濁した水晶体を取り除いて、きれいな眼内レンズを挿入する手術です。このため、白内障による水晶体の混濁が視力低下の原因であれば、これは手術により改善しますが、言い換えれば水晶体以外の箇所については変化しないということです。網膜に加齢黄斑変性があったり、緑内障で視神経が傷んでいればそれについては当然そのままですから、これによる見えにくさは残ります。例えば高度の緑内障がある場合には、白内障手術をしても見え方が全く良くならないこともあります。カメラの修理をする際に、レンズの部分だけ新品に交換しても、フィルムや他の部品が傷ついてしまっていれば完璧にきれいな写真は撮れないということと同じ理屈です。
 
②狭隅角の治療目的の白内障手術だった
狭隅角といって眼の中の隅角というスペースが狭くなっている方は、視力が低下していなくても白内障手術が必要な場合があります。水晶体を取って、薄い眼内レンズに交換することで眼の中のスペースが拡がるのです。手術の目的はあくまで眼内のスペースを確保することであり視力の改善ではないため、術後も見え方の改善を自覚しないことがあります。一方で、狭隅角眼では多くの場合遠視化しているため、白内障手術で遠視が治るとそれだけで喜ぶ方も多いです。
 
③屈折が変化して見やすい距離が変わった
白内障手術を行うとある程度好きなところにピントを合わせることができます。単焦点レンズであれば一般的には遠方もしくは近方にピントを合わせことが多いです。この時に注意が必要なのが、例えば遠方にもともとピントが合っていた方で「術後は手元が裸眼で見えるようになりたい」というリクエストがあった際、患者さんの要望を鵜呑みにして深く考えずに手元にピントを合わせた場合、遠方が全然見えなくてクレームになる場合があります。読書や編み物など、日常生活ではほとんど手元を見ているので手元にピントを合わせたいという方はとても多いですが、もともと遠くが裸眼で見えていた方は眼鏡無しで遠くが見えないことのストレスを感じやすいのです。このような方には、「手元が裸眼で見えるようになると、遠方をご覧になる時には常に眼鏡を装用している必要がありますが本当に大丈夫ですか」と念を押すことが非常に重要です。手元も遠くも裸眼で見たい、白内障手術を契機に老眼を治したいという場合には多焦点眼内レンズの使用を検討します。
 
④手術の負担が大きかった(合併症が生じてしまった)
医学の進歩に伴い白内障手術は洗練され、とても安全かつ短時間で終了する手術になりました。そのような中でも、執刀医の力量は千差万別であり、さらに白内障の状態により手術の難易度も様々なので、白内障手術は必ずあっさり終わるとは言い切れません。白内障手術の際に時間が長引いたり、合併症が生じた場合には術後の視力回復が遅れることや、最終的な視力の回復が限定的になってしまうこともあります。重篤な合併症が生じた場合、硝子体手術をはじめとする追加手術を行うことで視力の改善を目指しますが、何をしても視力が戻らないことがあるのも事実です。いわゆる難症例の白内障手術については硝子体手術を施行可能な医師に任せることで、万一の合併症の場合にも迅速な処置を受けることができます。
 
上記のように様々な原因が考えられますが、白内障手術は一般的には見え方が良くなることの多い前向きな手術ですから、過度に心配する必要はありません。白内障手術を検討しているものの、術後の見え方がどのような感じになるか不安な方は、診察の際担当医に十分確認を行って下さいね。
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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