黄斑円孔
黄斑円孔とは
黄斑円孔は、網膜の中心部(黄斑)に穴が開いてしまう病気です。黄斑円孔を発症すると、視力が大きく損なわれたり、物がゆがんで見えたり、真ん中が霞んで見えたりします。
黄斑円孔は中高年の方に発症しやすい病気で、女性に多い傾向があります。また、近視の方も黄斑円孔を発症しやすいと言われています。強度近視の方が黄斑円孔を発症すると、そこから網膜が剥がれてくることがあり、これを黄斑円孔網膜剥離といいます。黄斑円孔網膜剥離になると急激な視機能の低下が起こります。
検査所見
黄斑円孔の診断は光干渉断層計(OCT)と呼ばれる機械で行います。OCTで網膜の断層写真を確認することで黄斑の形態を確認することができます。黄斑円孔は眼内の硝子体が網膜から剥がれること(後部硝子体剥離)に関連して発症すると言われており、4つのステージを経て進行します。
早期の診断が非常に重要で、近年は機器の進歩に伴いかなり早い段階で網膜形態の変化を検出することができるようになっています。当院では、その中でも最上位クラスのOCTを導入しており、極めて高い精度で網膜の病気を診断することができます。
症例写真
1)網膜の中心である黄斑では硝子体と網膜の癒着が一般的にも強くなっていますが、この癒着が特に強い場合には、網膜が硝子体に牽引されることによって網膜に穴があきます。下の写真でも、黄斑部において硝子体が網膜を上方に牽引しており(黄色矢印)、その結果網膜の外層部分に穴があいています(赤矢印)。
2)硝子体による網膜の牽引が進むと、網膜の表層が弁状に持ち上げられた状態となります(黄色矢印)。この段階にいたると、網膜の全層に穴があいた状態となり全層黄斑円孔と呼ばれます。
3)硝子体と網膜の癒着が解除されると、黄斑円孔の上方に蓋(網膜の一部であった組織)が観察されます(黄色矢印)。また、この段階に段階になると全層黄斑円孔であることが一目でわかるようになります。
4)黄斑円孔に網膜剥離が加わった状態を黄斑円孔網膜剥離といい、一度この状態にいたると手術を行なっても視機能の回復は限定的になってしまいます。黄斑円孔網膜剥離は、目の前後の長さ(眼軸長)が長くなる強度近視の方に生じることが多いですが、下記の写真は眼軸長が短い遠視の方に生じた珍しいケースです。黄斑円孔に加えて、網膜が剥がれている(黄色矢印)ことがわかります。
治療
黄斑円孔の治療は手術を行うことです。初期の小さな黄斑円孔では自然に閉鎖することもまれにありますが、完全に穴が開いてしまった場合、原則的には早急に手術をすることが望ましいです。穴が開いた状態で長い時間が経過すると、治療により黄斑円孔が閉じても視力の回復が限定的となるためです。また、完全に穴があく前の状態においても、手術によって早期の閉鎖を得る方が最終的な視力の予後がよくなります。
手術は硝子体手術を行います。眼内の硝子体を取り除いた上で、網膜の表面にある内境界膜という硬い膜を除去します。その後眼内に空気または医療用のガスを充填して手術を終了します。
術後はうつぶせの姿勢になって頂き、空気が眼の奥の黄斑に当たるようにします。黄斑円孔に空気が当たることで、黄斑円孔が閉じやすくなります。このうつぶせの姿勢は治療の上で極めて重要です。当院は日帰り硝子体手術を行っているため、日帰りで治療可能です。黄斑円孔を発症する方は網膜と硝子体の癒着が非常に強いことが多く、癒着の程度によって手術の所要時間は変動しますが、おおよそ15-20分程度で終了します。
白内障手術が済んでいない場合には、硝子体手術の際に白内障も同時に治療することが多いです。
手術費用
片眼あたりの費用の概算は下記のとおりで、金額には手術費用とその他にかかる費用を含んでいます。
記事監修 眼科医 渡辺 貴士
日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師
大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。