メニュー

緑内障

緑内障とは

緑内障とは、目の奥にある視神経が障害されることで視野(見える範囲)が徐々に障害されていく病気です。40歳以上の有病率は5%程度とされており、決して珍しい病気ではありません。

初期段階で視野が欠け始めていても、人間は両眼で物をみているため気づくことができません。見えにくさを感じる程度に視野が欠けてしまった時には、緑内障は中期以降の段階に入っています。一度視神経が障害されて欠けてしまった視野は元には戻りません。

そのため、定期的な眼底検査や視野検査を行って、緑内障を初期段階で発見して進行を抑えることが重要となります。

 

 

<緑内障の分類>

1)開放隅角緑内障

目の中の房水の出口である隅角の広さは正常ですが、房水が最終的に眼外へ出ていく線維柱帯の部分において流れにくくなっているために、眼圧が上昇した状態(22mmHg以上)です。眼圧を下げる治療が必要になります。

2)閉塞隅角緑内障

目の中の房水の出口である隅角が狭い(狭隅角)ために、眼圧が高くなっている状態です。

閉塞隅角緑内障においては、隅角が更に狭くなることで急激な眼圧上昇を起こす(急性緑内障発作)ことがあります。急性緑内障発作は数日で失明に至ることもある重篤な状態であり、急性緑内障発作の発症を予防するために、レーザー虹彩切開術や白内障手術によって隅角のスペースを広げておくことが重要となります。

 

3)正常眼圧緑内障

目の中の房水の出口である隅角の広さが正常で、眼圧も正常範囲内(21mmHg以下)の病型です。日本人に多いタイプの緑内障です。視野障害が進む原因として、眼圧以外の原因も指摘されていますが、眼圧を下げる治療が現在できる唯一の治療になります。

 

緑内障の治療

緑内障の治療の基本は「眼圧を下げること」になります。眼圧を下げることで、視神経にかかる負担を減らし、視野障害が進行する勢いを抑えることができます。

様々な作用機序の目薬を用いることで眼圧を下げますが、点眼薬を何種類も使っても眼圧を十分に下げることができずに視野障害が進行してしまう場合があります。そのような場合には、手術治療によって眼圧を下げることが必要です。

患者様の中には「緑内障の手術をして緑内障を治して欲しい」という方がいらっしゃいますが、緑内障を根本的に治療できる方法はありません。緑内障の手術は、眼圧を下げることによって視野障害の進行を食い止めるものになります。

緑内障の手術技術の進歩はめざましく、現在は様々な手術方法が各施設によって行われております。ここでは、代表的な手術である①線維柱帯切開術(トラベクロトミー)②線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)をについて解説します。

 

1)線維柱帯切開術(トラベクロトミー)

眼内の水(房水)は、線維柱帯という場所から眼の外に出て行きます。線維柱帯は網目状の構造をしており、この網目状の構造が様々な原因で詰まってしまうことで、房水が眼の外へ排出されにくくなり、眼内に房水が貯留して眼圧が上昇します。(お風呂場の排水溝が詰まり水があふれてしまうような状態をイメージすると分かりやすいです)。

この流れが悪くなってしまった網目状の線維柱帯を、眼内に挿入した専用のフックを用いて切開し、房水が元通りに流れやすくなる経路を作成します。下の手術写真では、線維柱帯(茶色の帯状にみえる部分)をフックで切開し、切開できた部分から出血しているのがわかります。

線維柱帯切開術では、切開した線維柱帯から必ず眼内へ出血が起こる(前房出血)ため、手術後1週間程度は見え方が悪くなることがあります。出血は自然に引きますが、出血量が多い場合には眼の中の出血を洗う処置を追加する場合もあります。

また、手術後10%程度の症例において、眼圧が一時的に高くなることがあります。眼圧を下げる薬を使用しても改善が得られない場合には、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)を追加で行うことを考慮します。

 

2)線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)

線維柱帯切開術(トラベクロトミー)を行っても眼圧の低下が不十分であった場合や、緑内障の視野障害が進行しているために、より強力に眼圧を下げる必要がある場合に行う手術です。房水を眼外の空間(結膜の下)に流す経路を作成することで眼圧を下げます。

結膜を切開した後に、眼球の壁である強膜を切開して強膜弁(フラップ)を作成します。隅角(房水の流出路)と虹彩の一部を切除して、眼内の房水が眼外に流れる経路を確保します。強膜弁を縫合する糸の強さを調整することで、房水の流出量を調整します。最後に結膜を縫合し、結膜下に房水が適度に溜まった状態を確認して終了となります。

 

線維柱帯切除術を行なった後には、眼圧の変動が大きく、様々な合併症を生じる可能性もあることから、術後は頻回の通院による経過観察が必要となります。

術後の眼圧が高い場合には、強膜弁を縫合した糸をレーザーで切除することで房水の流出量を増やします。また、眼圧が低い場合には、強膜弁や結膜を縫合することで房水の流出量を減らします。

 

 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

▶︎医師紹介

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME