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白内障手術における水晶体核落下

[2023.06.04]
白内障手術における重大な合併症である水晶体核落下についてお話しします。
 
白内障手術は濁った水晶体(白内障)を摘出して、代わりに新しい眼内レンズを挿入する手術です。
濁った水晶体の処理の方法には近年では超音波を使用することが多く、これにより2mm程度の小さな切開で手術をすることができるようになりました。あまりに進行した白内障については超音波での処理が難しくなるため、眼を広く切開して水晶体を丸ごと取り出すような手術を行います(水晶体嚢外摘出術:ECCE)。
 
技術の進歩に伴い、一般に白内障手術は通常短時間で問題なく終了することが多くなってきていますが、中にはその限りではない手術もあります。さまざまな合併症が知られており、程度によっては手術は長引き、術後の回復にも時間を要す場合があります。
 
術中の合併症として、最も重大な合併症の一つに、水晶体核落下が知られています。
これは濁った水晶体が手術中に眼の奥(硝子体腔)に落下してしまった状態です。
原因としては、手術中に水晶体の外側の袋(水晶体嚢)が破れてしまい(後嚢破損)、その穴から水晶体が眼の奥に落ちてしまったり、水晶体を包む袋(水晶体嚢)を支えている紐状の組織(チン小帯)が断裂してしまい、水晶体嚢ごと全体が眼の奥に落ちてしまうことなどがあります。
丁寧な手術操作により上記の合併症は発症確率を下げることができますが、中にはどんなに丁寧に手術をしても合併症が起こってしまう場合もあります。
 
 
水晶体核落下が起こると、落下した水晶体が眼の奥で炎症(水晶体起因性眼内炎)を起こしてしまうので、速やかに眼の奥の手術(硝子体手術)をすることが必要になります。
硝子体手術では、眼の奥の硝子体を切除して、さらに落下した水晶体を処理します。本来白内障手術は、水晶体嚢を残して、その部分を利用して眼内レンズを固定しますが、水晶体核落下が生じた場合、水晶体嚢は利用できないことも多いため、その場合は眼内レンズの土台がないため、眼内レンズを眼の中に縫い付ける眼内レンズ縫着術が必要になります。
 
硝子体手術が行える施設は少ないため、一般に上記の合併症が起こると硝子体手術を行える施設に速やかに紹介されます。
水晶体核落下のリスクが高いことが予見されている場合(重度のチン小帯脆弱例や、白内障が極めて進行している方など)は、硝子体手術に対応している施設で治療を受けると、万一の合併症の際にもそのまま硝子体手術を受けることが出来るため、より安心といえます。
 
当院は硝子体手術を得意としており、常時緊急手術可能な体制にあるため、上記のいわゆる難治例の白内障手術の患者様や、他院での水晶体核落下例をご紹介頂く機会が多く、積極的に手術を行っています。
他院で治療が難しいと言われた方も是非一度ご相談頂ければと思います。
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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