逆さまつ毛・眼瞼内反
逆さまつげ・眼瞼内反とは
まつ毛が目にあたっていると逆さまつげとよく言われますが、原因となるまぶた(眼瞼)やまつ毛の状態によって、①睫毛乱生、②眼瞼内反、③睫毛内反の3つに大きく分類されます。どの状態かによって治療方法も大きく異なります。
睫毛乱生
睫毛乱生(しょうもうらんせい)とは、通常であれば外側に向かって生えているまつ毛の一部が、内側に向かって生えている状態です。まつ毛が本来生える位置よりも粘膜に近い側から生えてしまっている状態を特に睫毛重生(しょうもうじゅうせい)といい、この場合には特に眼球への接触による刺激症状が強くなります。睫毛重生も広い意味で睫毛乱生の中に含まれます。
内側に向かって生えたまつ毛が眼の表面をこすることで、眼の表面が傷付けられます。眼の表面の傷が軽度であれば、定期的にまつ毛を抜いたり、目薬で眼の表面を潤す治療で経過をみることができます。しかし、眼の表面の傷が高度な場合や、繰り返しのまつ毛の抜去が困難となる場合には手術を行います。
上記の写真では、両眼の上まぶたの外側(耳側)において、まつ毛が眼球に接触するように生えている(青矢印)のがわかります。その他の大部分のまつ毛については特に問題がありません。
上記の写真は睫毛乱生の重症例です。長年にわたって睫毛乱生(青矢印)を放置していたため、角膜に角膜アミロイドーシス(赤矢印)と呼ばれる白色の混濁を生じています。涙液に含まれるラクトフェリンというタンパク質が、まつ毛の接触によって障害された角膜の表面から角膜内に侵入した後に、変性して沈着したものです。
眼瞼内反
眼瞼内反(がんけんないはん)とは、まぶた全体が内側に反り返ってしまった状態で、まつ毛が常に眼の表面をこするために、眼の表面を傷付けてしまう状態です。下まぶたに生じることが多いです。加齢性の変化により、下まぶたを下方向に牽引する筋肉(下眼瞼牽引筋)が弱くなることや、下まぶたを水平方向に牽引する靭帯(内眥靭帯・外眥靭帯)が緩んでしまうことが原因となります。
眼瞼内反を生じている原因に応じて適切な術式を選択して手術を行います。
上記左側の写真では、下まぶた全体が内側にひっくり返っており、まつ毛全体が目の表面をこすることにで角膜が傷ついています。右側の写真は、下まぶたを押し下げて元の位置に戻したところですが、内側に溜まっていた多量の目脂も一緒に出てきています。
上記の写真は両眼の眼瞼内反の方ですが、上段の2枚ではそれぞれ下まぶたが内側にひっくり返り、まつ毛が眼球に接触しています。下段の2枚は下まぶたを下方向に牽引したところですが、下まぶたのひっくり返り方が通常と異なるのがわかります。この所見は、加齢性の変化で下眼瞼牽引筋が弱くなっていることを示唆しています。
睫毛内反
睫毛内反(しょうもうないはん)とは、通常は外側に向いているはずのまつ毛が、全体的に内側を向いている状態です。眼瞼内反とは異なり、まぶたの位置自体は正常です。
下眼瞼牽引筋(下まぶたを動かす筋肉)の穿通枝が、まつ毛が外側に向くように力を働かせていますが、この組織が先天的に脆弱な場合や、皮膚や眼輪筋などの組織が多いためにまつ毛を内側に押す力が強い時に睫毛内反の状態となります。
睫毛内反は鼻側に生じることが多いです。乳幼児に多くみられる疾患で、成長と共に顔の骨格が変わってくることで自然に改善する例が多いものの、10歳以上になっても改善がない場合では手術を考慮します。また、幼少期であっても眼の表面が強く傷付いている場合や、角膜乱視が強く視機能に影響を及ぼしている場合には手術が必要となります。
上記の写真では、両眼とも下眼瞼鼻側のまつ毛(赤矢印)が全体的に内側を向いている睫毛内反の状態です。フルオレセイン検査で観察を行うと、角膜に多数の細かい傷がついている(黄色矢印)ことが確認できます。
上記の写真では、両眼とも下眼瞼全体のまつ毛が全体的に内側を向いている睫毛内反の状態です。まぶたは前葉(皮膚と眼輪筋)と後葉(瞼板)の組織にわかれますが、後葉が奥に強く引き込まれているため、術式選択の際に注意が必要となります。
保険診療と自費診療について
当院では保険診療での手術になるため、機能的な面での改善(まつ毛が目の表面をこすり傷付けていた状態を治すこと)が目的となります。整容面での改善(眼に異常所見はないが、まぶたやまつ毛の位置を修正したい)をご希望される方は、自費診療で手術を行っている医療機関への受診をご検討ください。
記事監修 眼科医 東 岳志
日本眼科学会認定 眼科専門医
瞼の手術や涙道の治療を行う眼形成外科を専門としています。特に眼瞼下垂手術を得意としており、眼科専門医として眼の機能を第一に考えながら、整容面にも最大限配慮した治療を心がけています。