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中心性漿液性網脈絡膜症(CSC)

中心性漿液性網脈絡膜症とは

中心性漿液性網脈絡膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいもうみゃくらくまくしょう)は、網膜の中心である黄斑部において、網膜の下に水分が溜まり網膜が剥がれた状態です。

病名が長いため英語名であるcentral serous chorioretinopathyの略語であるCSCと呼ばれることが多いです。

30-40歳代の男性の片眼に生じることが多いですが、女性にも生じることがあります。

脈絡膜血管からの透過性亢進などが原因として考えられていますが、まだ原因は明らかにはなっていません。喫煙、ストレス、ステロイドの内服、妊娠などが発症の危険因子とされています。

 

 

中心性漿液性網脈絡膜症の症状

黄斑部の機能が障害されるために、視力低下、変視症(ゆがんで見える)、小視症(物が小さく見える)、中心暗点(中心部が暗く見える)、色覚異常などの症状を生じます。

一般的に視力低下は軽度で、変視症や中心暗点を不快に感じる方が多いです。色覚異常は、よく知られている先天的な色覚異常とは異なり、今まで色の見え方に困っていなかった方が、色の見え方の変化を自覚します。

視力予後は良いとされていますが、CSCが慢性化し網膜が剥がれる変化を繰り返すと、最終的には網膜が萎縮し視力が悪化する場合があります。

 

中心性漿液性網脈絡膜症の診断

眼底検査、OCT検査、眼底自発蛍光検査、蛍光眼底造影検査などで診断を行います。
OCT検査

網膜の断面図を見るOCT検査では、網膜下に漏出した水分(網膜下液)が貯留し、網膜が剥がれている状態を確認できます。

近年CSCとその類縁疾患では、脈絡膜が肥厚していることが明らかになってきており、pachychoroid(パキコロイド)関連疾患と呼ばれます。CSCはpachychoroid関連疾患の1つであり、OCTでは脈絡膜が分厚くなった所見を認めます。
蛍光造影検査(FA)

蛍光眼底造造影検査(造影剤を用いて網膜の血流を見る検査)では、血管から水分が漏出している所見を確認できます。

下の写真でも、水漏れを生じている小さな点(漏出点)があり、時間経過と共にその漏出範囲が拡大しています。

 

中心性漿液性網脈絡膜症の治療

数ヶ月の経過観察で自然に治る場合も多く、禁煙やストレスの少ない生活を心がけることが自然治癒を促します。点眼薬や内服薬による治療が行われることもありますが、現時点では有効性が明確になっている薬剤はありません。

CSCによる網膜剥離が長引いた場合や、再発を繰り返すような場合にはレーザー治療を検討します。

レーザー治療には、レーザー光凝固、閾値下レーザー、光線力学療法(PDT)などがあります。

レーザー光凝固

蛍光造影検査(FA)で網膜剥離の原因になっている漏出点を、レーザーで直接凝固します。漏出点が黄斑の中心部(中心窩)に近い位置に存在する場合には、治療を行うことができません。

閾値下レーザー

漏出点を直接凝固するのではなく、漏出点の周囲に非常に弱い出力でレーザーを多数照射する方法です。

作用機序は明らかになっていませんが、網膜色素上皮細胞に熱刺激が加わることで、網膜色素上皮細胞による網膜下液の排出が促進されることが考えられています。

光線力学療法(PDT)

加齢黄斑変性の治療法の1つである光線力学療法(PDT)をCSCに対して用います。加齢黄斑変性に対する設定よりも低侵襲な設定にして治療を行います。

有効性は報告されているものの、現在は保険適用外の治療です。

 

鑑別が必要な病気

中心性漿液性網脈絡膜症と加齢黄斑変性の一部は似たような検査所見となるため、鑑別するのが難しいことがあります。
 
 

記事監修 眼科医  渡辺 貴士

日本眼科学会認定 眼科専門医
東京医科歯科大学眼科 非常勤講師

大学病院や数々の基幹病院において第一線で多数の手術を行ってきました。特に白内障手術と網膜硝子体手術を得意としています。現在も東京医科歯科大学の非常勤講師を兼任しており、大学病院での手術指導および執刀を続けています。

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